セルラーゼ活性測定法

 セルラーゼの酵素活性を測定するのは、他の酵素と違って難しさがあります。それは、セルロースという基質が水に溶けないことによるものです。同じグルコースの重合体であるアミロースは、加熱することで可溶化しますが、セルロースは、熱をかけても可溶化しません。セロオリゴ糖は、6糖までは、なんとか水に溶けますが、7糖より大きいオリゴ糖は水にわずかしか溶けません。

 そこで、セルラーゼの活性を測定するのに使っているのは、水に溶けるようにしたセルロース誘導体です。そのひとつが、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose; CMC)です。これは、セルロースを酢酸によりカルボキシメチル化したものです。カルボキシメチル基は、グルコースの6位、2位、3位のヒドロキシル基を置換できます。この置換度が高くなれば、基質は、水に溶けやすくなりますが、セルラーゼの基質としては、不向きになります。すなわち、カルボキシメチル基がどこに入っているかで、基質のクレフトへの入りやすさがかわり、置換が多くなれば、基質が酵素と結合することができにくくなります。一方、セロビオヒドロラーゼの場合、還元末端、あるいは非還元末端のいずれかから、セロビオース単位で加水分解しますので、カルボキシメチル基が存在すると、そこで酵素反応が止まり、先に進むことできなくなります。

 エンドグルカナーゼ活性測定の場合、カルボキシメチルセルロースを基質として、加水分解で生じた還元末端を、ジニトロサルチル酸試薬、あるいは、ソモギーネルソン法などの還元糖の定量法で測定します。また、還元糖の定量では、嫌気性菌の培養のように還元剤を入れたような培地では正確に測定ができないことがあります。このような場合は、カルボキシメチルセルロースの分解を粘度の低下で測定することができます。たとえば、回転粘度計でカルボキシメチルセルロース溶液の粘度低下を測定することで、酵素活性を評価します。エンドグルかナーゼの場合、還元糖の生成量のわりには、急速な粘度の低下がおこります。一方、セロビオヒドロラーゼの場合は、還元糖の生成が見られても、ほとんど粘度の低下がおこりません。この性質を利用して、エンドグルカナーゼとセロビオヒドロラーゼの区別をつけることができます。ただ、世の中の常で、この間の性質の酵素も存在しています。粘度計などがない場合には、簡易的に、ガラス管内の基質溶液の落下速度でも粘度低下を見ることができます。

 そこで、セロビオヒドロラーゼでは、酸膨潤セルロース(Acid Swallen Cellulose; ASC)を基質にします。これは、アビセルなどのセルロースを濃リン酸に溶かし、この溶液を水に加えることにより作成します。また、p-ニトロフェニル-β-セロビオシドなどの着色性化合物を基質とすることができます。p-ニトロフェニル-β-セロビオシドの場合、加水分解されると、p-ニトロフェノールとセロビオースが生じます。p-ニトロフェノールは、アルカリ性下で黄色に発色しますので、これを吸光度で測定します。ただし、p-ニトロフェニル基の存在が、問題になる場合もあります。ファミリー48のセロビオヒドロラーゼは、ほとんどp-ニトロフェニル-β-セロビオシドを分解しません。

 そのほか、簡易的に活性を検出する方法がいくつかあります。そのひとつが、CMCとコンゴレッドを使用した方法です。これですと、分光光度計のような装置がいりません。CMCを含む寒天に酵素液を希釈してドロップし、一定時間のインキュベーション後、コンゴレッドにより染色と脱色を行います。これにより、生じた透明環の大きさや、透明度、希釈による透明環出現の限度などにより、活性の強弱を見ることができます。