ヒートパイプ (thermo-syphon, thermo-tube, heat pipe)



 ヒートパイプは、液体の蒸発と凝縮の潜熱を利用した装置です。小さな温度差で大量の熱を運べます。ヒートパイプは、1963年にアメリカで開発されて以降、人工衛星の温度制御や電気機器の放熱、家電、灼熱炉、融雪などに広く用いられています。
 本体は両端の閉じたパイプで、中に作動液が入っています。原理はいたって簡単です。パイプの片端が温められると、そこで作動液が蒸発して熱を吸収します。蒸発した気体はパイプの中を拡散し、反対端(低温部)で潜熱を放出して凝縮します。液体は重力や毛管力で再び高温部へ戻っていきます。こうして、パイプ高温端から低温端へ効率良く熱が運ばれるのです。
 例えば、ヒートパイプを地中に立て、地熱で地表を暖め、雪を融かすといった利用法があります。逆に、永久凍土地帯のパイプライン周囲などでは、ヒートパイプを用いて凍土を維持していることもあります。ヒートパイプさえ建てておけば、後は外気の冷え込みでどんどん土壌を凍らせられるのです。
 ヒートパイプはあまり場所を取らない、そんなに高価でもない、一切駆動燃料を必要としない、ほとんどメンテナンスが必要ないなど、人にも環境にも優しい装置です。冷熱エネルギーや氷雪エネルギーの利用を考えるとき、有効な装置だと思われます。
 写真は駐車場下の凍土を維持するために設置されたヒートパイプ(Yellowknife, Canada:1998年6月23日撮影)。

 
戻る