20世紀後半に急速に拡大した食料や石油エネルギーに由来する生活物質の大量生産・大量消費・大量廃棄に基づく生活様式は,便利で快適 である反面,深刻な地球温暖化問題や食料問題などを引き起こしています.これらの問題に対処することを目的として,全国の大学に先駆けて設立 されたのが資源循環学科です.現在、「循環型社会」あるいは「持続可能な社会」の実現が必須であることが認識されてきており,これまで廃棄してきたあらゆるものを新たな資源やエネルギーに変えることにより,環境への負荷を軽減することが求められています.また,持続的食料生産のための種々の技術の開発や循環型社会の設計ということも必要です.資源循環学科は,バイオテクノロジーを中心とした様々な基礎教育に加え総合力と応用力を養う教育・研究体制を整え,21世紀の食料・環境問題の解決に取り組み,循環型社会の実現に貢献します.
生物資源学部では平成27年度から、資源循環学科、共生環境学科、生物圏生命科学科の3学科体制のもと、専門分野を再構成しました。
資源循環学科・資源循環学専攻の講座
生物循環機能学

自然の中でもともと生物が持っている機能を活用して,利用されていない生物資源を有用な資源に換えていくことを目標に研究しています.例えば,微生物を利用して食品製造副産物や未利用の資源を家畜の飼料として活用する技術を研究しています.また,微生物がワラや草を分解していくメカニズムを調べ,バイオエネルギーを得るための活用を目指しています.
生物情報工学

生物体を生体構造・形・物性・特性という要素を持つ構造体として考え,分子や細胞レベルから植物体や食品を対象とした光計測法の確立とその解析・データベース化,および計測データに基づく生命現象の解析などの基礎研究をおこなっています.また、ICT(Information Communication Technology)を核とした農業支援システムから食品の新規加工法や味覚評価,生物・循環プロセス計測などの応用研究にも取り組んでいます.
生物資源経済学

現在,日本の食料自給率は40%まで低下する一方で,発展途上国での食料需要の増加やバイオ工ネルギー生産の増加などのために世界の食料需給は逼迫しつつあり,価格も上昇傾向にあり,今後の食料の安定供給に対する不安が高まっています.本研究室では,このような日本や世界が直面している食料や農業,さらにそれと関連した環境や農村の問題について社会経済学的側面から研究しています.
森林生物循環学

森に生育する樹木に腐生,寄生,共生するカビ,キノコについて,その多様性の仕組みとはたらきをDNAから野外までの幅広い範囲で,生態学的な視点から調べています.そこから導き出される情報から,健康な森の管理や維持とともに絶滅しそうな植物の保全に活かすような方法を探っています.
生物物性学

体の全体に血液を運搬している血管の細胞や筋肉の細胞の生理的機能を研究しています.血管は筋肉と同様伸びたり縮んだりして血流を調節し血圧をコントロールしています.このような収縮や弛緩の機能に関わるタンパク質やその遺伝子の機能を調べています.単離した血管の細胞を培養することも行っています.動脈硬化症などの病気と血管細胞の病変についても調べています.
循環経営社会学

主に農業経営学,地域社会学の視点から,食料問題・農業問題・環境問題を考察しています.生ゴミの堆肥化など食品リサイクルの推進,有機農業や環境保全型農業経営の確立,企業や個人による農業参入の促進,競争力ある農業経営の育成などの課題に取り組んでいます.実際に国内外の農業経営や食品関連企業を訪ねたり,農業団体や行政機関に政策提言をしたり,消費者の食に対する意識を調査したり,現場に出て人と触れ合う機会が多い分野です.
生態循環学

食料安全保障の強化を目指して,植物生態生理学の視点から次のような研究テーマに取り組んでいます.(1)温暖化対策:作物に対する乾燥・高温障害の軽減,(2)肥料の効率的利用とそれによる河川の富栄養化防止,(3)資源植物の環境ストレス抵抗性(塩害、酸性土壌),(4)食料と競合しないエネルギー資源の開発:サゴヤシなどの生理生態研究と資源化.
食品資源工学

食品資源の主要な成分である糖質(特に食物繊維やデンプン)や,糖質の合成・分解に関与する酵素の特性について研究しています.また,酵素や微生物を利用した機能性糖質の合成や効率的なバイオ燃料生産など,糖質資源変換技術の開発に取り組んでいます.
資源経済システム学

本研究室は,"さかな"と"うみ"を中心に,自然資源とそれを育むフィールドに関して社会科学の立場から学習・研究します.例えば"さかな"に関しては,持続的な生産・流通・消費について学び,良質なタンパク質を安定的に供給し,安全な食品として流通させ,安心して消費するための社会システムについて考えます.また,"うみ"に関しては,海面の様々な利用や,伊勢湾などの"うみの環境"の保全と漁業のあり方などがテーマです.
土壌圏生物機能学

植物が生長に必要な栄養素(無機元素)をどの様に選択し,吸収しているのか?そのメカニズムを知るために,特殊植物(超集積性植物)における輸送膜タンパク質(トランスポーター)の働きを,遺伝子工学を用いて解析しています.さらに,これらの研究を通じて,安全な食料の生産や植物を用いた環境浄化,金属資源の回収などに関する研究を進めており,人類の福祉に寄与する植物バイオテクノロジーの発展を目指しています.
微生物工学

微生物の持つ多様な生理機能や微生物が生産する酵素などの機能を分子,遺伝子,微生物細胞,微生物の集団の各レベルで解析し,利用するための研究を行っています.主なテーマは,セルロース分解酵素とその遺伝子の解析およびその改良,バイオマスの有用物質やバイオエネルギーへの変換,環境浄化,微生物や植物細胞の分子育種法開発などで,遺伝子工学やタンパク質工学,代謝工学などバイオテクノロジーの手法を用いています.
地域環境管理学

環境問題は私たち人間社会の前進を阻む大きな要因になろうとしています.本研究室は,地域で起きている様々な環境問題の解決方法を模索するために,問題を現場でじっくり,深く見つめ,社会の側のこれまでの意識や行動やしくみ・制度を変えることによって問題解決を図ろうと務めています.とりわけ近年閉鎖性水域とそれを囲む流域の生物多様性をはぐくむ「再生」を模索する動きが高まっており、様々な場面でこの問題に関わっています.
土壌圏循環学

生物生産の場である土壌圏に降り注ぐ水は,浸潤,蒸発を繰り返し,植物に吸水され,また土壌圏から流失します.この水分の流れにより,溶解している化学物質(肥料・汚染物質など)も動きます.この土壌圏中の物質移動のメカニズムを解明し,その移動予測モデルの構築を目指しています.そのため,土中の水分・溶質・熱移動特性の推定,土中の水分量や塩分濃度測定手法の改良,土の凍結メカニズムの解明などに取り組んでいます.
栄養機能工学

食物に対する生体の応答を個体,組織,細胞,さらに分子レベルで明らかにすることを目的として研究しています.具体的には,動植物・微生物から得られた未利用資源や食品廃棄物からタンパク質やペプチドなどを精製し,動物実験や細胞培養の手法を用いて健康の増進や生活習慣病の予防に役立つ成分を明らかにしています.
草地・飼料生産学

草やわら、食品製造副産物といった人間が直接食べることができない植物資源は、家畜の飼料として利用することで、乳や肉といった人間の健康を支える食料に変換することができます。私たちはこのような植物(飼料)資源の生産や発酵による貯蔵、ならびに反芻家畜における栄養素の利用性を中心に研究を行っています。
食・環境・文化情報学

農林水産業は,地球環境を適度に制御しながら環境保全している唯一の産業であり,農林水産業が創り上げてきた景観は人類の文化アーカイブです.本研究室では,農林水産業から観光までを繋ぐミクロ・マクロ情報の連続的な取り扱い手法,すなわち,(1)フィールドでのマルチバンド光による情報収集手法,(2)画像・スペクトルによる品質・安全・倫理情報の伝送手法,(3)多様な情報表現による文化表現手法,を研究開発します.
微生物遺伝学

有用微生物の生理機能を遺伝子レベルで解析し応用するための研究を行っています.主なテーマは,微生物の遺伝子工学や代謝工学による改良,微生物や植物細胞の分子育種法開発などで,特に嫌気性細菌を対象に分子遺伝学的手法を応用してバイオマスをバイオエネルギーへ効率的に変換する研究に力を入れています.さらに微生物が生産するバイオマス分解酵素の遺伝子発現制御機構の解明も行っています.