生物の不思議を明らかにして私たちの生活や未来に役立てるという目標のもと,2年次より下記の講座のいずれかに所属し,研究室だけでなく附属農場・水産実験所・附属練習船なども積極的に利用して専門的な勉強や研究を行います.「生命機能科学講座」では,生命現象の仕組みや,鍵となる物質の構造と働きを分子や遺伝子レベルで明らかにし,生体の調節や新しい機能を持つ物質や技術の開発に関する科学を学びます.「海洋生物科学講座」では,微生物からプランクトン・海藻・魚介まで,さまざまな生物を研究して,環境・野生生物保全や機能性食品・医薬・化粧品開発につながる科学を学びます.「陸圏生物生産学講座」では,人類に必要不可欠な農業生産について,最新の生物科学的手法を用いて研究し,安全で良質な食料の供給や,緑豊かな環境の維持に役立てる方法を学びます.「水圏生物生産学講座」では,魚類・甲殻類・貝類・プランクトン・海藻等の生物資源を効率的に増やし持続的に利用する方策を,基礎から応用面まで幅広く学びます.
生物資源学部では平成27年度から、資源循環学科、共生環境学科、生物圏生命科学科の3学科体制のもと、専門分野を再構成しました。
生物圏生命科学科・生物圏生命科学専攻の講座
分子細胞生物学

動物細胞を主な研究材料として用いて,細胞レベルで起こる様々な生命現象,例えば,DNA複製,転写,DNA修復,分化,細胞死のメカニズムなどについて,生化学的,分子細胞生物学的手法を用いた基礎研究を行っています.一方で,これらの研究によって得られた知見を,バイオサイエンス及びその関連の多岐にわたる分野に応用することも目指しています.
海洋生物化学

わが国は古くから海洋生物,特に藻類を食糧資源や工業原料として活用してきました.近年,藻類のヒトに対する機能性が注目され,また,将来に向けた養殖海藻の安定生産が重要課題となっています.大型あるいは微細藻類由来の『美と健康』に寄与する機能成分探索とその動態,および海藻の生長・代謝特性を分子レベルで解析することにより,社会への還元を目指して研究を行っています.
分子遺伝育種学

育種とは,人間にとって望ましい方向へ生物の遺伝的性質を改変する技術であり,品種改良と言い換えることもできます.私たちの研究室では,植物の育種にとって重要な生殖機構(自家不和合性),種子形質,病害抵抗性などについて,DNAやゲノムレベルで研究を行っています.また,植物への遺伝子導入技術の開発を行い,育種に有用な遺伝子の機能解明や遺伝子組換え植物の作出を進めています.
水圏資源生物学

貝類と魚類の遺伝や進化について研究を行っています.具体的には,有用種アコヤガイの品種改良と養殖技術の改良,外来種の起源の解明(シジミ,ブルーギル),ミトコンドリアDNAの両性遺伝様式(ムラサキイガイ),生物の種分化(メバル,タナゴ,フナ等の魚類),希少淡水種保護(アマゴ・タナゴ)について研究しています.本研究室の目標は,水産業に役立つ研究を行うだけでなく,私たちのごく身近な生物の進化や繁殖等に関する"謎"を遺伝子分析などをツールにして科学することです.
分子生物情報学

食品,医療分野では,様々な酵素が利用されていますが,酵素の熱安定性や触媒メカニズムについては,まだ多くのことがわかっていません.当研究室は,遺伝子工学,分子生物学,分析科学などを用いて,これらの仕組みを解明することをめざしています.また,食品や化粧品への保存物質の影響,土壌に対する環境ストレス物質の影響を,熱量計を用いて正確に評価する方法の開発も行っています.
生体高分子化学

海洋に生息する生物は水中という特殊な環境のもとで生存しています.そのため海洋生物は陸上生物とは違った形態と機能を進化させてきました.私たちの研究室では「タンパク質を変性させる尿素を体内に蓄積していてもなぜサメ類は生きてゆけるのか」,「二枚貝はなぜ大きな力で殻を閉じ続けることができるのか」という筋肉に関する疑問を解明するために遺伝子工学やタンパク質工学のテクニックを駆使して研究しています.
資源作物学

人間は衣・食・住を基礎とした人間らしい生活を実現するために必要な資源を農林水産業により持続的に生産しています.そのうち,食糧となる食用作物や工業原料となる工芸作物などの資源作物について,それぞれの特性を明らかにし,有効な栽培・利用方法をみいだそうとする学問が資源作物学です.三重県特産品のイセイモ,ダイズ,水稲などの新品種育成や環境保全型農業生産技術の開発を通して地域の農業に貢献しています.
水族生理学

解剖学,組織学,電気生理学,遺伝子解析,行動解析など多様な攻め方で魚類の感覚系や行動についての総合的な研究を行っています.視力,色覚,紫外線感覚に着目し,水中環境で魚はどのように世界を見ているのか調べたり,味覚や嗅覚の特性を調べ,摂餌・回遊・繁殖など,生態への感覚器の関わりについて研究しています.また,魚の学習行動や生物時計の研究も行っており,得られた知見を環境に優しい養殖技術に役立てる研究も行っています.
生理活性化学

薬が効く,味がする,香を感じる,風邪をひく,これらにおける共通点は,すべて分子と分子が結びつくことから始まることです.つまり,痛み物質を作る酵素の働きを抑える頭痛薬,アミノ酸が舌の受容体に認識される,香料が鼻の粘膜働きかける,ウイルスが細胞に侵入するなど,そこで起こる結合する仕組みを解明することを通じて,良く効く薬,美味しい食品,芳香剤や香料,ウイルス病治療薬など,人をより幸せにする方法を探っていきます.
海洋微生物学

海洋微生物は海洋生態系の構成要素のひとつとして重要な役割を果たしています.したがって,これら微生物生態系を解析し,海洋微生物の多様な機能および特性を生理生態学的・生化学的・分子生物学的な面からとらえ,これらの特性を利用することを目標にしています.また,食品微生物を制御するための洗浄・殺菌技術の開発や,衛生管理のための清浄度の評価技術に関する研究も行っています.
園芸植物機能学

果樹類の受精・着果能力,野菜類の温度ストレスをはじめとする各種環境ストレス耐性力など,有用園芸植物がもつ様々な機能を,主として生理・生化学的手法を用いて研究しています.また,応用的な立場から,機能性成分が高まるような栽培方法を工夫し,高品質な果物・野菜を効率よく生産する技術,例えば高糖果実生産技術や植物工場の環境制御最適化技術の開発に関する研究を併せて行っています.
浅海増殖学

浅海域における増養殖業とその活動のスタートとなる魚介類の種苗生産に関する新たな技術開発,特に魚類や甲殻類の稚仔を人工的に大量生産する際に必須な動物性の初期餌料生物プランクトンの培養技術の開発や栄養価の向上に関する研究,さらに,産業上有用な水圏動物(養殖魚介類)の病害を防止するため,病原微生物の性状や水圏動物の免疫機構を解析し,有効な治療薬あるいはワクチンの開発に繋がる研究を行っています.
生物機能化学

私たちの役に立つ物質を色々な生き物の中から探しています.例えば,イラガの毒液ペプチド,ゴマの抗酸化物質,細胞周期調節物質や細胞増殖抑制物質などです.これらがどんな形(構造)をしているか分かったら,それらそのものや,それらに似ていて,もっと高機能な物質を,化学や酵素の力を借りて合成し,役に立てる工夫をしています.
生物海洋学

水圏の生態系はまず植物プランクトン,それを食べる動物プランクトン,そしてそれを食べる小魚,その後大きな魚という流れで構成されています.私たちは,そんな生態系の低次に位置するプランクトンの動態を環境との関連から調べることこそ海洋生態系の保全につながるとの信念に基づいて,海洋における無機・有機物質の流れ,動・植物プランクトンの生態系における役割,そして赤潮・貝毒の発生メカニズムについて研究しています.
動物生産学

ウシ・ブタ・ニワトリの作る肉・牛乳・卵を食べることで,人は良質のたんぱく質を摂ることができます.私たちの研究室では「動物のホルモン分泌」や「工サの消化に重要な微生物」について調べることで,動物の生産性を高めるための基礎的な研究を行っています.動物の生産性を高めることができれば,より少ない工サで動物を飼うことができるので,食料問題や環境問題の解決につながります.
魚類増殖学

近年,海や川や湖から魚がずいぶん減ってしまいました.その原因は,汚染や破壊などの環境の悪化,乱獲,外来生物の侵入などさまざまですが,多くの場合,人間の活動が要因になっています.私たちが原因で減ってしまっている魚たちをこれから先,どのようにしたら増やすことができるのか?魚の生態や繁殖機構を明らかにしながら,魚たちの側から魚を増やすための研究に取り組んでいます.
食品機能化学

食材料に含有している物質の潜在的機能を創薬・医療・診断などのバイオサイエンス分野で利用するため,生化学的および有機化学的に基礎・応用・実用化に向けた研究を行っています.基礎研究として,目的とする生体機能が関連する生命現象を分子レベルでシステム的に研究します.次にその理解に基づいて機能性分子の創生を行います.最終的に生命科学の分野で利用できる物質や技術を実用化します.
藻類学

ワカメなどの海藻やアマモなどの海産種子植物の生理・生態の研究を行っています.これらの海産大型植物が,生きていくために必要な環境条件を明らかにすることを目的にしています.そのために,潜水調査や光合成測定,培養,多糖類・酵素分析,コンピューターシミュレーションなどの手法を用いています.得られた研究結果は,藻場造成などの環境修復事業や海藻養殖に活用されています.
植物感染学

植物に病気をおこす微生物(おもに糸状菌,かび)が私たちの研究対象です.これらは農業や林業をするうえで有害な微生物ですが,一方で植物と微生物という異なる生物間の関係を研究することは興味深いことです.私たちは植物の病気による被害を少なくするため,植物の病気の診断とその原因微生物の分類の研究をしています.また,植物寄生菌と植物との関係について,生物進化,生物系統地理,生物多様性などの視点から研究しています.
応用行動学

実験室内に海中や湖沼内の光環境を再現して,魚類や甲殻類が光の強さや色の変化に対してどの様な反応行動を示すかを計測しています.また,練習船に乗って伊勢湾や外洋の黒潮流域まで出かけて海洋観測をしたり,河川や湖沼内の太陽光の日変化等を測定して,光の強さや向きと魚の視力や餌を見つける能力の変化を解析しています.これらの方法で,魚類や甲殻類の行動生態と生息環境との関係を研究しています.
海洋個体群動態学

魚を減らさずにとり続けるにはどうしたらよいのか?魚を絶滅させないためにはどうしたらよいのか?魚を守り,人の暮らしを豊かにするにはどうしたらよいのか?水産資源管理や水産生物の保全について,コンピュータを使った解析と,野外で魚を獲ったり観察したりする調査によって研究し,魚のため,そして人のためになることをめざしています.
昆虫生態学

私たちの目標は,害虫の防除,有用昆虫の利用,昆虫群集の保全のための知識をおもに生態学・行動学・進化学的に深めることです.テーマとして基礎から応用研究まで幅広く扱っていますが,どちらかといえば,基礎研究が中心です.現在研究している主要な昆虫は,ウンカ(稲の重要害虫),カマバチ(ウンカの寄生蜂,子殺しを行う),社会性ハチ類,小甲虫(果樹などの花粉媒介者),カメムシ類(害虫として,ただの虫として)です.
水族病理学

魚介類の病気(魚病)に関すること,具体的には魚介類が病気にかかる仕組み(病理),病気を起こす生物(病原生物),魚介類が病気から身を守る仕組み(生体防御),および魚病の治療法や予防法などについて研究しています.
海洋生態学

海には,みなさんの知っている魚やクジラ,イルカより,ずっと多くの貝や力二,ヒトデなどの背骨のない生物が住んでいるのを知っていますか?これらの生物には外来種と,一方で絶滅に瀕した種がたくさんいることがわかってきました.でもその生態の多くは謎に包まれています.海の生物資源と生物多様性を守るために,海洋生態学の研究は今後さらに重要になるでしょう.野外の生態調査に興味のある方は,ぜひ一度見に来てください.
水圏生物利用学

発生・分化,免疫系や筋形成など脊椎動物が有する様々な高次生命現象の実験モデル魚類としてゼブラフィッシュを選び,ゲノムワイドなオミックス解析を展開するとともに,システム生物学に関する研究を行っています.また,キンギョを用いた有用タンパク質の生産や抗体を取得することで,バイオ医薬品開発につながる研究開発も行っています.
水産物品質学

水産物や水産加工品を中心に食品の鮮度保持や品質評価,安全性に関する教育研究活動を行っています.それらの応用として,1.水産食品に含まれる機能性高分子化合物(魚類血液中の糖タンパク質,海藻多糖類やポリフェノール類)の分子構造や生理機能の解析,2.水産食品に残留する薬物の定量分析,動態の解明をテーマに研究活動を展開しています.
海洋食糧化学

海洋生物を構成する生体分子には,陸上生物由来のものとは異なるユニークな構造と生理機能を持つ物質が存在します。研究室では,海藻由来のフェノール性化合物や糖質,脂質をはじめとする有用有機化合物の探索と利用,特に機能性食品としての応用を目指した研究を進めています。ターゲットとなる有機化合物について,質量分析装置による構造の推定や動物細胞を用いた生理機能の評価など生化学のアプローチから解析を行っています。