卒業研究(修士論文研究)の基本的な流れ・考え方
2006.9.7(淀 太我)
研究室分属後,皆さんは「卒業研究」を行うことになります。魚類増殖学研究室では,原則的に学生の皆さんに自分で研究テーマを考え,計画を立て,実行してもらいます。それは,皆のやりたいテーマは極力やらせてあげたいという事に加え,自分の力で一つの研究をやり遂げることこそが,大学教育の総仕上げになると考えているからです。企画を立案・計画し,実行し,とりまとめる。これは,普通の会社に勤めても,必ず必要になってくる能力です。
とはいえ,何から何まではじめての経験でしょうから,どこから手を付けて良いのか分からない人がほとんどかと思います。
そこで,卒業論文を書くまでの,基本的な流れや考え方について,簡単に書いておきますので参考にして下さい。これを読んで分からないところは,先輩や教員に聞いてください。
1.研究計画
執筆中
2.プログレスレポート(Ver. 1.0, 2006.9.7)
プログレスレポートとは,研究の進捗状況をゼミで報告してもらうものです。基本的に毎月皆さんにやってもらいます。目的は,その1ヶ月の間に,どれだけのことをやったのか,計画通り進んでいるか?の確認です。
といっても,これまで皆さん「何をやったらよいのやら?」ともっとも悩んでいるのがこのプログレスレポートです。
そこで,レジメに最低限これだけは書いて欲しいという項目と,実際の例を書いておきます。
◆学年・氏名・日付・"プログレスレポート"の表記。
◆研究テーマ名:自分のやっている卒業研究等を端的に表すタイトル。
◆背景:その研究に意義を見出すための背景。なぜこの研究をやる価値があるのか?
◆目的:どういう結果を出すつもりでいるのか。(論文の結果部分)
◆期待される成果:この研究によって(論文を読んだ人にとって),何が得られるのか?発展的内容,また,真の目的。(論文の考察・まとめ部分)
◆研究スケジュール:調査や実験の概要とそのタイムスケジュール。
◇進捗状況:上記スケジュールの中で,現在どこまで進んでいるのか,前回の報告からどれだけ進んだか。これからどういうスケジュールで進めていくか。進捗の順調さ,あるいは次に示す課題点をゼミ参加者が理解できるだけの結果を示す。
◇課題点とその克服:現在直面している問題点を整理する。自分でその克服方法を考えているならそれを示し,ゼミで意見を求める。無いものについては,打開策についてゼミで意見を求める。
◇進捗状況の自己評価:論文執筆作業を除く,卒業研究等(≒調査・実験・解析)について,終了までのうちどれだけ進んでいるかについて,自分なりに百分率で示す。
以上の各項目を必ず記載する。これらをA4用紙1〜2枚程度で収まるようにし,不足分は適宜パワーポイント等で説明する。◆の項目は,特に修正がなければ,前回(or研究計画)からのコピーペーストで良い。前回から変更があったのなら当然それも説明する。◇の項目が毎月新たに作成する部分。
※中間発表は,それまでに得られている結果をもとに,「タイトル」「緒言」「材料と方法」「結果」「考察」について,本番と同じスタイルで発表するもの。プログレスレポートは大いに参考になるが,別物である。
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作例(あくまで淀が勝手に書いた例で,実在の研究と数値等は異なります)
◆卒業研究テーマ名:「三重県奥の野川におけるホトケドジョウの生態および水質調査」
◆背景:日本固有の淡水魚であるホトケドジョウは,生息地である山沿いの細流の開発などにより近年減少が続いており,環境省レッドリストで絶滅危惧IB類に指定されている。三重県内にある本種の南限生息地の水路において,コンクリート護岸工事が行われる事となった。工事によってホトケドジョウに深刻な影響が予想される。
◆目的:そこで,1)生息環境として限界に近いであろう本生息地における工事前の生息状況・生息環境を把握する,2)工事区間における生息個体数を把握する,事を目的として研究を行う。
◆期待される成果:A)調査区間ないにおけるホトケドジョウの生息する場所,しない場所の環境を比較することにより,本種の生息に必要な環境条件が抽出できる。B)工事前に行うホトケドジョウの避難活動の際に,救出の目標値・達成値を提示できる。C)工事後の避難魚の放流の判断基準および,事後モニタリングによる工事の影響評価の基礎資料となる。D)今後周辺水路や全国で行われる,ホトケドジョウ生息水路の工事の際に,ホトケドジョウに優しい工事を提案できる。
◆研究スケジュール:3月から工事開始の11月まで,調査区間を9つのセグメントに分けて,各月1回採集と生息環境調査を行い,個体識別による個体数推定を行う。計測する環境項目は水温,pH,溶存酸素量,COD,BOD,導電率,アンモニア態窒素濃度,亜硝酸態窒素濃度,硝酸態窒素濃度,流量,上空被覆度である。各月の解析は随時行い,11月以降,期間をまとめたデータ解析と論文執筆を行う。
◇進捗状況:9月時点において,調査は毎月順調に遂行している。前回の課題であった,流量測定法については文献を参考に採水法を改め,表面流速と水深から間接的に求める方法を採用した。現在のべ346個体が採集され,識別個体数は241個体となっている。現時点で工事区間における生息個体数は105個体と推定されている。工事前の避難採集の際は,この数値を目標とする。残りの10月,11月の調査を同様に行い,論文の執筆に取りかかる予定。
◇課題点とその克服:再捕獲数が少なく,個体数推定が不可能あるいは精度の悪いセグメントが存在する。→移動のみられる複数セグメントを1つにまとめる。
全採集場所で少数ながら生息が確認されるため,期待される成果Aの解析が難しい。→生息の有無でなく,生息数,生息密度などで評価する。
BODは測定に非常に手間がかかる割に,生息環境をうまく示せていない。→測定省略による効率化を考える。
上空被覆度の客観的評価が難しい。→文献等によってオーソライズされた方法を探す。
◇進捗程度の自己評価:70% (理由:8回の調査のうち6回終了,解析済み=75%。後いくつか課題点克服のための勉強が必要=−5%,レジメには書かなくても良い)
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3.中間発表
執筆中
4.論文執筆
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