霜柱 (needle ice, Kammeis, pipkrake, shimobashira)



 よく冷えた冬の朝、まるで大地からニョキニョキ生えたかのような氷の柱を庭先に見かけることがあります。こうした氷の柱を霜柱とよびます。霜柱は踏めば簡単にバラバラと壊れてしまいます。寒い朝に霜柱をサクサク踏み荒らしながら歩くのも楽しいものです。

 霜柱は地中の水が凍ってできるもので、大気中の水が凍ってできるとは生成機構が異なります。
 夜間から明け方にかけて地表面が冷やされると、温度勾配によって地中から水が地表面に向かって移動します。この水が地表面で凍り、成長したものが霜柱なのです。霜柱は頭に土粒子を載せているのに特徴があり、温度、土質、水分条件によって大きさや成長速度が異なります。よく探して見れば、丈が10cm以上にも達した霜柱を見つけることができるかも知れません。


     [少しだけ詳しい説明]

 水が凍るとき、水は異物を吐きだしながら凍ろうとします。例えば、製氷皿に砂糖水を入れて冷凍庫に入れておくと、表面がべとべとした氷ができます。これは、水が凍るときに砂糖を表面に吐きだした結果です。同様のことが、土の凍結でも生じます。つまり、氷から土粒子が吐きだされるのです。
 地表面が0度以下に冷やされると、先ず地表面近くの水がその場で凍ります。これが霜柱の赤ちゃんです。赤ちゃん氷の地中側(下面)が地中の水みちと接していると、氷が土粒子を吐きだしながら成長します(霜柱の底面が成長面)。ただし、地球を丸ごと吐きだす訳にはいきませんので、氷は自分自身の体を持ち上げながら成長することになります。このとき、たまたま霜柱の上にあった土粒子も一緒に持ち上げられます。

 ところで、氷の結晶は六角柱をしています。これは雪の結晶の形を思い浮かべてもわかると思います。この六角柱の底面(Basal)方向をC軸、柱(Prism)面方向をA軸とよび、それぞれの方向への成長速度は温度や水分供給量によって異なります。
 霜柱が成長する温度条件では一般に、氷結晶の成長速度はA軸方向が卓越します(六花の雪の結晶のうち一本の腕ばかりが伸びているような状態)。また、霜柱の太さは、成長面の水道の太さ(土粒子の間隙の大きさ)や冷却速度に依存します。これらの結果、氷が一本一本の細い柱として成長し霜柱を形作るのです。
 霜柱は火山灰土、シルト質土など凍上性の高い土によく見られます。たとえば、関東ロームなどは特に霜柱ができやすい土と言われています。霜柱は日本では古くからなじみの深いものであり、昭和初期からいくつかの研究例が見られます。中谷宇吉郎先生の「「霜柱の研究」について」を見つけたら、一読してみることをお薦めします。

 写真は北海道・川湯温泉郷にて見かけた丈5cm程度の霜柱。下の写真は岩の上にできており、少し珍しいものです。1997年2月24日撮影。


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