土壌以外の凍上現象



 土壌が凍結すると地盤が隆起することは古くより知られており、凍上現象は土に関する分野でよく研究されてきました。凍上は、ともすれば土に特有な現象と思われがちですが、他にも様々な物質に見られる現象です。
 たとえば、「土」以外でも、ガラスの粉、タリク、おがくず、ベンガラなど多くの多孔質体や粉粒体(但し水を含む)が凍結するとき、アイスレンズができ凍上することが知られています。また、「水」以外にも、土中のベンゼンや、ガラス粉体中の液体ヘリウムやアルゴンなども、凍結時にレンズ状の結晶として析出し、粉体を凍上させる様子が報告されています。



 上の写真はいずれも当実験室で行っている凍結実験の様子で、左から順に「土壌(シルト質)」「石(凝灰岩)」「ガラスの粉に水を混ぜたもの」「粘土」「ガラスの粉にシンナー系の溶剤(THF)を混ぜたもの」を凍らせたときの様子です。
 最初、試料は2度にならしておきました。次に、写真の左端を低温(-4℃程度)、右端を高温(+1℃程度)に保ち、試料を凍結しました。各試料の(a)は試料が凍結し始めた頃、(b)は凍結が進み、アイスレンズが見られ始めた頃、(c)は暫く凍結させ、アイスレンズを充分に成長させた頃の写真です。図中、凍結部分を薄い青色で、アイスレンズを黄色の矢印で示してあります。また、写真の横幅は2.5mm程度です。

【写真左から1枚目】実験室でも、自然の土壌と同様に、とびとびのアイスレンズができました。
【写真左から2枚目】石が凍ると、アイスレンズができ石が砕けました。こうした凍結による石の破砕のために、トンネルの岩盤が崩壊したり、橋の土台が崩れたり、文化財などの石構造物が傷んだりすることあります。また、コンクリートも石同様に凍上害うけると言います。
【写真左から3枚目】土や石でなくても、ガラスの粉体中にもアイスレンズが観察されました。このガラス粉体は、粒の大きさと形をそろえたものです。このため、アイスレンズの形やサイズも均一にそろいました。
【写真左から4枚目】膨潤粘土の凍結の様子です。粘土中で氷が析出しましたが【写真左から1枚目】とは異なり、とびとびなアイスレンズはできず、変わりに樹枝状の氷が成長しました。また、氷が成長した分だけ粘土が収縮したため、試料は少しも膨張しませんでした。
【写真左から5枚目】ガラス粉体とTHF溶液を混ぜたものを冷やすと、クラスレートハイドレートが生成しました。「ハイドレート」も「アイス」レンズのように析出し、試料を凍上させることがわかります。ただしハイドレートの場合、レンズの形状は随分違った様子となりました。

 凍上現象やアイスレンズについての詳細な説明、上記のような実験の動画はこちらをごらんください。

 


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