アイスレンズ (ice lens, segregated ice)



 地表が0℃以下に冷やされると、土中の水が凍結面近傍に集まり、氷の塊として析出することがあります。こうした析出氷はその形が凸レンズ状に見えることから、アイスレンズと呼ばれます。左の写真(James Ross・南極:1998年1月30日)の土の中で、黒っぽくしわの様に見えるところが全てアイスレンズです。中谷宇吉郎博士は、写真下方のような小さなアイスレンズ群を霜降り状氷、写真中ほどの大きなアイスレンズを霜柱状氷と呼びました。
 アイスレンズは凍結の進行とともに発生、成長、ジャンプを繰り返し、写真の様にとびとびな層を形成します。一枚のアイスレンズの厚さは、土質や凍結速度などによって決まります。凍結面がゆっくり進行した所や停滞していた所では数cm以上の厚いアイスレンズが見られることもあります。理論的には条件さえ揃えば無限に近い厚さの一枚のアイスレンズが成長することも可能なはずですが、自然界では数cm以上のものはなかなか見られません。写真中ほどのアイスレンズは1cm以上あり、これでもそれなりに厚いアイスレンズと言えます。
 アイスレンズ中の氷は温度勾配方向へa軸をそろえて成長しています。これは霜柱とも類似する点です。偏光板を通してみると、一本一本の細い氷の柱が束になってアイスレンズを形成しているのがわかります。ところで、土壌の再凍結時に土中に氷板が生じることがあります。この氷板は、見掛け上アイスレンズとよく似ていますが、その成因や結晶方位がアイスレンズと異なるため別の物として扱われます。また、積雪中に生じる氷板のこともアイスレンズと呼ぶことがありますが、これは土中のアイスレンズとは全く別物です。
 アイスレンズは凍上現象の主要因であり、その生成メカニズムにもまだ不明な点が多々あります。また、アイスレンズは土以外にも様々な物質中で生じるため、多いに研究する必要のある現象です。
 ・より詳しいアイスレンズに関する説明はこちらをごらんください。

 
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