-ナラ類集団枯損被害-

ナラ類の集団枯死被害とは?

 日本海側を中心にして1980年ごろから顕著になっているブナ科樹木が集団的に枯死する被害のことで、その被害は2010年現在も収束していません。被害発生地域は現在1都2府25県で被害が報告されています。枯死被害樹種は、ブナ科12種にわたり、九州地方ではシイ、カシ類が単木的に、日本海側の広い範囲では、コナラ、ミズナラが集団的に枯死しています。また、紀伊半島では、やや集団的なコナラの枯死に加え、単木的なシイ、カシ類の枯死も見られています。
 このナラ類の集団枯死被害の特徴は、被害木には例外なくナガキクイムシ科の甲虫(養菌性キクイムシ)、カシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)の多量の穿入が認められることであります。被害木の地際部には、この穿孔によるフラスが多量に堆積しています。林分内のすべてのブナ科樹木が枯死することはありませんが、被害木は夏場に葉が萎凋し、赤褐色に変色して枯死にいたります。

病原菌について

この被害での枯死木の材変色部や孔道から優占して不完全性子嚢菌類(Raffaelea quercivora)が分離され、またカシノナガキクイムシの幼虫や成虫の体表からも本菌が分離されています。このことから、カシノナガキクイムシが病原菌を運んでいると考えられ、接種試験などからこの菌が病原菌であると考えられています。最近の研究では,DNA情報とともに,形態情報で重要とされる分生子形成様式に関する詳細な検討を行い,その形成は認識されている以上に多様であることを示しました.また隣国の韓国でも類似の現象が報告されており,モンゴリナラにP. koryoensisが穿入し,R. quercus-mongolicaeがその枯死に関与すると考えられています.

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