研究室について
 近年,シカなどの大型草食動物の増加による森林植生の衰退は深刻な問題です。植物の種数と個体数の減少に伴って,生物多様性の低下および生態系の劣化が起こるからです。このような森林生態系を保全するためには,森林の成り立ちと仕組みを明らかにすることと,個々の植物種の特性ならびに生物間の相互関係を理解する必要があります。この研究室では,実際に森林などの野外に出かけ,植物群落や植物の生活史に関係するデータを取ったり,植物を栽培して生理生態学的なデータを取ったりと,独自のデータを集めます。それらのデータを解析することで,樹木の性質や森林生態系のしくみを理解し,樹木や生態系の保全につなげることを目指します。
 研究内容
 個々の植物種の性質や森林の成り立ちと仕組みを明らかにするために,森林や水辺林をフィールドとし,樹木や草本植物を対象とした生態調査を行います。また,植物の生理生態学的な性質を明らかにするために,温度や水などの環境条件をコントロールして植物を栽培し,成長や生理状態の測定を行います。
 主なテーマ(フィールド)を次に示します。

  • 劣化した天然林の自然再生:大台ヶ原におけるトウヒ(マツ科)稚樹の生残と成長
  • 劣化した天然林の自然再生:トウヒ成木の樹液流速に影響を及ぼす要因の解明
  • 準絶滅危惧植物の保全:シデコブシの実生の生存と成長に影響する環境要因(海上の森)
  • 森林の構造とダイナミクス:林分構造と樹木の空間分布(白神山地,演習林,大山,白山)
  • ブナの乾燥耐性遺伝子の地理的変異の解明
  • 雌雄異株植物の空間分布と生態:ヒメアオキ,ヒメモチ,アブラチャン,チドリノキ(大山,演習林)
  • 融雪傾度に伴うナナカマド属3種の分布と生物季節(白山)
  • 植物の生理生態:水辺林のヤナギ類がもつ乾燥と冠水への耐性(宮川,ガラス室)
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