生物資源学部(学部4年)と大学院生物資源学研究科(修士課程と博士課程)

 

新年度のご挨拶  

 共生環境学科(専攻)を代表して

 共生環境学科(専攻)を代表して

3月11日の東日本地震の犠牲者となられた方々、被災された方々に対し、謹んでお悔やみとお見舞いを申し上げます。はからずも、そういう年に専攻長・学科長を受け持つこととなりました、加治佐隆光と申します。

 学科全体の紹介については、すでに多くの説明が公開されていますので、この地震の関連であいさつをさせていただければと思います。まず、あまりにも大きい災害ですので、これを読んでおられる皆さんもどのようにそれに向き合えば良いのか暗中模索といったところではないでしょうか。この余波はしばらく尾を引くでしょうが、私の場合、直近のところでは、「波」と「伊勢湾台風」についてDVD2枚を学生に紹介しました。

 「波」については、風波の大きくなっていくメカニズムが、どういう要因に支配されているかという歴史的なところから話が始まりました。既存のマニュアルで対処できない問題を解決しようとするためには、科学的アプローチが必要であり、要因を分析してゆくことがその第1歩であり、その研究方法が紹介されていたことになります。津波の話がそれに続きました。

「伊勢湾台風」については、堤防が破壊されたメカニズムの説明もありましたが、その一方でドラム缶を駆使して修復した国道1号線の話なども紹介されています。すなわち、最前線で材料を駆使して応急処置をほどこし、道路の通行を確保するといった緊急時における現場の工夫の話です。

  科学的アプローチにせよ、現場の工夫にせよ、共通しているのは、マニュアルのない場面でプロ集団がいかに問題に取り組んだかということですね。

 どの科目でも、プロ集団の話にウェイトがかかりますと、学生は感動もある一方で、解決策を学んだ気がせずもの足りなさを感じることでしょう。逆に、公式の紹介など、マニュアル化された知識の習得にウェイトがかかりますと、学生諸君は、ある程度の充実感を覚える一方、味気なさを感じることでしょう。ですから、その両方のバランスが大切なのでしょう。今、ここに紹介しています共生環境学科の一番の特徴は、その両方が用意されていることです。

 入学を希望とする方々には、何の資質も要らないと私は思っています。ただ、環境の問題について、マニュアルのみに依存しない本当の解決策を探ろうとする気持ちが必要です。その意欲がこの学科を支えています。その気持ちの紹介をもちまして、代表としてのあいさつに代えさせてください。ありがとうございました。

共生環境学専攻 専攻長(学科長) 加治佐隆光


  



 

2010年度

 共生環境学科(専攻)を代表して

 当専攻のホームページをお尋ねいただき、ありがとうございます。今年度専攻長・学科長を受け持ちます、村上克介です。

 共生環境学科が発足して、満9年が経過いたしました。また、大学院共生環境学専攻が発足して満5年が経過いたしました。3月には9年前に共生環境学科に入学した学生が、博士後期課程の最終学年に達し、2名の課程博士(学術)を輩出いたしました。旧制高等農林学校の伝統を持つ本学でありますが、過日大学院大学となり、このように共生環境学を学び、専攻してきた博士がこれから社会にて活躍することになります。

 大学というのはまことによくできた仕組みです。教育と研究を合わせ行うことによって、最先端の情報を学生に教授できるようになっております。そして、われわれ教員は常に在学生に必要なカリキュラム編成について苦心しております。学部時代は勉強の基礎的素養として高校時代に習った学習に上積みを行いますが、目先の単位をこなしてゆけばある程度体系的に専門知識、当学科でいうなら環境問題を、基礎的な科学や技術を通して深く考えることができると同時に、科学に関する普遍的な知識も身につけることができます。
大学院博士前期課程では、講義科目もありますが、主としては自ら文献読破などにより情報を得、テーマを定め、実験計画を立て、実験を遂行し、結果をまとめて考察し、対外発表を行い、修士論文にまとめ、論文審査と最終試験に合格することが求められます。大学院博士課程では、これに加えて、学術論文を数報執筆し、その外部審査にも合格することが求められ、修了要件とされます。

 さて、我が国は経済発展の過程で先進国に学び産業の振興に成功し、世界の中で優位な地位を築いて参りました。しかし、近年、先進諸国一層の努力、また発展途上国の追い上げも厳しくなる中で、先行き不透明な状況が継続する傾向にあり、政策的にも混迷が感じられる様になりました。このような中で、優位な立ち位置を確保し、人類の発展に貢献するには、独自の学術、技術を先駆けて持つ必要があります。「オリジナリティ」の必要性は、従前にも増して重要となっております。
大学は、研究成果を論文として公表いたしますが、論文に求められる要件とは、独創性、進歩性、有用性です。そして、その主題は発見、発明、考案、工夫であり、いまだ明確にされていない範囲の一部を明らかにしてゆきます。これが論文の「オリジナリティ」になります。卒業論文、修士論文、博士論文についてもすべてはこの条件を満たすように考えております。この作成過程において、科学的思考、創造的能力が育成され、充実した研究開発力が身につきます。大学院教育においては、この点を特に重視しております。

 個性を尊重した教育が必要と言われておりますが、私は、大学においては、単なる「個性尊重」でなく、それを活かした創造的能力の育成がもっとも重要と考えております。本学科および大学院では、通常の入試はもちろん、転編入、社会人、外国人など多様な入試を用意しております。ぜひ、私たちと共に、「創造的活動」に取り組んでまいりましょう。

 

平成22年度専攻長 村上克介

  



 

 

 

2009年度

 共生環境学科(専攻)を代表して

 

  三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻・生物資源学部共生環境学科という、名刺に書ききれないほど長い名称組織の、今年度専攻長・学科長の福山薫です。

私たちが日々、何を考え、どう行動しているか、またどのような研究教育活動をしているかを紹介します。このご挨拶が、共生環境学専攻・学科に興味を持っていただき、私たちと一緒に学び研究する契機となることを願っています。

 私が最近懸念していますのは、いわゆる環境問題があまりに安易な文脈で語られ過ぎていることです。いま喧伝されている「地球温暖化防止」は、冷静『科学的』に判断すれば、私たちが生きている時代には到底無理なことは自明です。にもかかわらず、TVのCMはじめ、さまざまなところで『地球にやさしい』『CO2削減』『エコ』『地球を救おう』などの甘い言葉が氾濫しています。ほんの少し真面目に考えれば、却って資源のムダ遣いや温暖化促進になるとわかりそうなことが、平気で、さも良いことのように次から次へ繰り出されています。

 いまから約200年前の江戸時代は美しいリサイクル社会であり、捨てるもの・無駄なものは何もなかった・・・と言われています。私たちは今ここで立ち止まり、どう進む(または後退する)かを考える時にあると思います。私たちの祖父母の時代は暗黒時代だったのでしょうか?


私たちの専攻・学科は、

・地球、自然、環境、地域について科学的に学び、探求する
・歴史に学び、(古き)佳き伝統を重んじつつ、進取の気性を持つ
・人類の有史からだけでなく、地球46億年の壮大な歴史、宇宙の自然史からも学ぶ
・海の底から山の天辺まで、いや、さらにその上の大気や上空までの自然の移ろい
 の美しさを自分のものにする
・非科学的できわめて短絡的に考えられがちな環境問題を、基礎的な科学や技術
 を通して深く考える
・環境の修復や保全のための新しい技術、工学的手法や方法論を学ぶ

ことを信条としています。

      

いま、人類の関心を集める地球温暖化や気候変動、気象異変等が私たちの毎日の暮らしとどう関連するかを、講義や実験だけでなく、練習船・演習林・農場等での実習・フィールドワークを通して、地球科学・工学と生物科学を有機複合的に学び研究することができる、世界で唯一ともいえる学舎(まなびや)が、私たちの専攻・学科なのです。

 


共生環境学専攻 専攻長(学科長) 福山薫



 

 

 

 地域保全工学講座

 

最近、テレビが気になる。

「農地がままならないから若い人たちが農業に参入できない」(講座のイメージ1)

 農地は動かせないと考えているひとが多いのですが、実は「換地」という言葉があります。これは、農家の人が農地を交換して農作業をしやすいように村の農地全体を良くしてゆこうとした古人の知恵です。集団農業をしやすい農地があれば、参加した営農グループの運営も軌道に乗りやすいわけです。この「換地」という語はいわば農業土木学用語であり、当講座の歴史を語る時に欠かせない語句のひとつです。
この講座はそういった計画的なことに立脚した手段として工学的教育を重視しています。

 

「ダムを作ったのに水がたまらない」(講座のイメージ2)

 これとよく似た話に「ダムはいらない」というのがあります。なんとなく、「ダムは要らないのだから、作ろうとしたこと自体がまちがい」と話をくくりたくなりますが、そうやって言葉をつないでゆくだけでは不安を感じませんか?誰かが漏水量を調査してその結果を数値で示したり、暮らしに必要な水の量を確定したり、水田にまわす水の過不足を見極めたり、ダムの耐久性、寿命、あるいはコストといったお金のことを数字で計算する人がいなくては、いくら環境のことも含めて総合的に将来を議論しようとしても判断材料がなくて困りますよね。この講座では、いろいろと主張を展開してゆく前のこういった客観的なことがらのひとつひとつを科学的なこととして重視しています。

 

「若い人たちの理系離れが進んでいる」(高校生の皆さんへ)

 当講座、学科、学部全体は確かに理系であり、学部名には生物の2文字があてがわれています。ですが、農学・水産学を背景にしていることもあり、社会学を中心に研究している人たちや、マシンづくりに没頭している人たちも多いのです。中学の時の理科は楽しくありませんでしたか?中学の理科の世界というのは、身近な自然への幅広い知識と好奇心に支えられた世界ですので、単なる受験のための理科力よりも私たちには魅力的です。上述の講座のイメージで書かれたことは、「あれもこれも」といった印象を受けるかもしれませんが、中学の理科など(もちろん社会や数学とか英語なども含めて)何かと幅広く学ぶことの楽しさを思い出すことができれば、入学後に努力して普通に卒業して、社会で活躍できます。

 

「大学を出ても就職がない、内定取消し問題」(保護者の皆さんへ)

 平成21年3月に卒業した25名(大学院生を含む)の詳細は以下のようでした。内定を取り消された学生はいません。
国家1種、国家Ⅱ種2名、大学院進学7名、愛知県庁3名、三重県庁2名、奈良県庁、静岡県庁、名古屋市役所、四日市市役所、鈴鹿市役所、鹿島建設、飛島建設、JR東海、外郭団体(土改連)、有限会社です。人数が書かれていない職場は1名を意味しています。留年(留学を含む)は3名です、がんばれ!

 

 なぜこの講座では農学とか工学に支えられた古くてぱっとしない学問をいつまでも教えていているのか、なぜ受験生にとってわかりにくい分野であり人気がないのか、それなのになぜ就職が良いといわれているのかといった一連の疑問を想定して以上のような文章を書きました。ご叱責等につきましては平成22年3月31日まで、講座主任が承ります。

 

地域保全工学講座主任 教授 加治佐 隆光

 

 森林資源環境学講座

 

今、森林が面白い

 森林は陸地面積の約3割を占めていますが、陸上における生物の総量としては9割が集まる巨大な生物群集です。この森林は地球温暖化防止や生物多様性維持などで地球環境に貢献しているだけでなく、人類の長い歴史のなかで材料や燃料としてずっと利用されてきましたし、現在では再生可能なバイオマス資源として新たな展開が期待されています。また森林は、古くから国土の保全や水源のかん養などの機能が重視されてきましたし、戦後の過程ではレクリエーション、自然環境、教育、文化などの新しい役割が次々と注目され、現在では森林や木材がもたらす癒しの効果が脚光を浴びています。

 森林資源環境学講座は、大学の各学部が集まったようなところで、生物学、物理学、化学といった基礎的科学、土木、建築、機械、応用化学などの工学のほか、経済学・社会学などの社会科学といった様々な手法の研究室から成り立っています。本講座の学生は、多様な役割を発揮する森林の特性について総合的に学習したうえで、環境を維持・増進させながら、持続的な資源の利用を進めていくための具体的な方法を、自分に適した専門性をみつけながら探求していきます。そのような学習成果をふまえて、学生は大学院、公務員、民間企業など、自分に合った進路をみつけていきます。

 森林は、太陽光のエネルギーを利用して二酸化炭素をとりこむことによって地球温暖化の防止に役立っています。それとともに、そこで生産された木材が化石資源に変わる材料やエネルギーとして新たに活用されることによって、森林はこれからの持続型社会や循環型社会の「要」のような役割を果たすことになるでしょう。また、ストレスのたまりやすい時代が進むなかで、森林の人間に対する精神的な役割への期待もますます高まることでしょう。このような森林の未来を本格的に切り開くことができるのは、現在の指導的な人たちではなく、皆さん方、若い世代以外にはないでしょう。

 これから大学に入って森林について学びたい人、1年生で進路に迷っている人、下記のようなことに興味のある人は、ぜひ森林資源環境学講座の各研究室を訪ねてみてください。そこには、全く想像もしなかった森林の未来があるかもしれません。

 1)  フィールドでの樹木や植物の生態観察、植物の生理作用に興味がある。
 2)  森林と人間生活・社会の関連を多面的に研究したい。
 3)  森林と災害の関係や、地球規模での水の循環を研究したい。
 4) 木質資源や環境資源としての森林を人間のために利用するシステムを研究したい。
 5) 自然環境を乱すことの少ない材料である木材を豊富に使った建築に興味がある。
 6) 森林の分子を活用し、石油に匹敵する、そしてそれに勝るハイテク材料を誘導したい。
 7) 物理系、化学系、生物系、社会系いずれにするか迷っている。

 

森林資源環境学講座主任 教授 三井昭二

                        

 

 自然環境システム学講座


地球の不思議を解明したい。これは地球人である我々すべが持っている欲求です。

 当講座では特に、「やわらかい地球」の解明を目指しております。「やわらかい地球」とは、大気圏、水圏、生物圏など、変化しがちな地球の部位のことです。

 猛暑や冷夏、豪雪や暖冬、異常多雨や旱魃、北極の海氷の減少、地球温暖化。これら「やわらかい地球」の異変や異常が「なぜ?」 起こっているのでしょうか?実はこの「なぜ?」に対する完全な答えを人類はまだ得ていないのです。地球には不思議なことがたくさんあります。気象や気候の不思議もその一つです。その「なぜ?」を解明し人類全体の文化に貢献すること。それが科学なのです。気候は、大気圏、水圏、生物圏、陸圏そして「人間圏」が相互に影響をお及ぼし合い、それらが融合した一連の「系(システム)」として変動しております。従って、気候変動の仕掛けを紐解くには、大気、海洋、陸水、陸上の植生、そして人間との関わりを統合的に研究する必要があります。当講座では海洋から陸地、森林、大気まで切れ目なく(シームレスに)研究対象としており、生物資源学部の中で唯一、海の底から山を越え、遙か空までの環境を総合的に研究することができる講座です。ですから「やわらかい地球の環境を科学する講座」と言い換えることができます。

 当講座のもう一つのユニークさは、気象学を本格的に学べるということです。大学の学部レベルで気象学を系統的に学べる大学は少数です。ここ東海地域では当講座のみです。地球規模の気象からローカル規模の気象、国内や海外そして海洋上での観測、実験、数値シミュレーション、GIS、リモートセンシングと、幅広く気象学をカバーしております。

 「やわらかい地球」や「気象」を学びながら、我々と一緒に地球の不思議にワクワクしませんか?どこかの研究室で、あなたの知的好奇心を満足させる、アカデミック・マインドに遭遇することができるでしょう。

 

自然環境システム学講座主任 教授 立花義裕

 

 

 

2008年度

 

 共生環境学科(専攻)を代表して

 

 ユニークな共生環境学科と専攻

                     
 共生環境学科は,平成12年度に設立されたユニークな学科です。学科の上に2年制の大学院博士前期課程(いわゆる修士課程)と3年制の博士後期課程(いわゆる博士課程)から成る共生環境学専攻があります。

  共生環境学科は,教員数が比較的多く,編成度の高いカリキュラムを用意しています。また,さまざまな教育分野をカバーしていますので,高校で習った数学,物理,化学,生物,地学のどれか好きな人はそれぞれの得意分野を生かした学習ができます。1年生は,共通教育科目といくつかの専門基礎科目を学習し,2年生からの志望講座を考えながら1年間勉強することができます。

  さて,入学して学習する共生環境あるいは共生環境学とはどのようなものでしょうか。それは地球の歴史と人間の生活に関係しています。

  現在の私たちの生活圏には,陸水域を形成する自然環境のなかで多様な生物が生活し,人間との共存があります。それらは,互いに影響を及ぼしながら地域の生態系を構成しています。自然環境の形成と人間の活動に伴って成立した共生環境は,河川・湖沼・森林や農地・農場,集落などから構成され,自然の恵みと脅威を受けながらも,これまで安定した環境を作り上げてきました。日本では,奥山の自然から里山・集落の自然まで自然を大切にし,荒廃した環境の修復も行いながら資源の保全や緑の自然を保って来ました。

  ここに近年,地球環境問題が生じてきました。人間の活動が大きくなりすぎて,その影響が地球環境にまで影響を及ぼすようになって,地球上での共生環境の維持が難しくなって来たのです。この問題は地球環境問題群(オゾン層の破壊,地球温暖化,熱帯林の減少,野生生物の減少,酸性雨,砂漠化,海洋汚染,有害廃棄物の越境移動,開発途上国の公害問題)として位置づけられています。この問題群の設定は環境省によるものですが,もっと身近な環境問題が私たちの周辺にはいっぱいあります。地球環境問題は私たちの身近な環境にも発生しているからです。

  自然環境の悪化は,徐々に進行するのでなかなか気がつきません。問題が発覚して気がついたときにはかなり重傷ということもあります。最終局面では,災害と同様に急激に事態が展開します。そういう意味で,環境問題は社会的危機(災害,戦争,疫病など)と同じ側面をもっています。

  一方,地球環境問題とは別に私たちが生活している環境(森林・地域・海洋など)と構成する資源そのものの状態(成り立ち)がどうなっているかは重要なテーマです。これは環境問題が発生したときに,もとの環境がどうであったかが問われるからです。

  共生環境学は身近な環境から地球環境のまでの情報収集・観測・解析・保全までの科学・技術を含んいます。このように共生環境学科と専攻では,私達の生活圏に直接・間接に関係する共生環境(生態系-環境-人間生活)の教育研究と同時に資源の利用・保全と環境修復について教育研究しています。
 

共生環境学専攻 専攻長(学科長) 林  拙 郎



 

 地域保全工学講座

 

地域保全工学講座
主任からのご挨拶

 地域保全工学講座は、かつては「農業土木」と呼ばれていた専門分野の一つです。
  この分野では、高度経済成長の時代(昭和30(1955)~昭和40(1974)年代)、便利さを優先した公共事業が進められてきました。しかし、本来の農業土木は便利さだけを優先するのではなく、「農業・環境・人々の生活・地域・国」(水土里;ミドリ)を総合的に考えることができる分野です。

 本講座は、三重大学の前身である三重高等農林専門学校農業土木学科の歴史を引き継ぐ伝統講座で、現在は「田園計画学、土資源工学、水資源工学、流域保全学、環境施設工学」の5つの教育研究分野(いわゆる研究室)より構成されています。そして、本講座では、環境と共生した生活空間を創造・保全する考え方を基本に、美しく豊かで住みやすい地域を築くための教育・研究に取り組んでいます。

 ところで、誠に恐縮なことですが、この文を書いている私は、農業土木学(あるいは農地工学)に加えて、土壌物理学という、さまざまな視点をもった科学の目を持つことが認められる学問体系を専攻しています。近年この土壌物理学では、物理学的視点を越えて、土壌微生物、土壌動物、植物根などの「生命」を直接対象としながら土壌物理的現象を解明しようとする研究も進められています。
  私が学生であった頃、研究室の勉強会で、「研究するということは、深く物事を調べ考えて、理を極め明確にすることをいう。理を極めるということは、論理を立てることであり、原理・原則から出発して事実を論ずることにある。系統的に組立てられた知識すなわち学問のためには、物事について明確な理解と認識またはその内容を把握しなければならない」と教えられました。その時に覚えた「研究の着想や発想」の楽しみはいつまでも持ち続けたいと思っています。
  加えて、土壌物理学は、自然の場の総合性や複雑性に対して物理学的手法をもって直視する学問であります。それを端的なキーワードで表せば、「実験科学、理論科学、観念、発想、微視・巨視、自然現象、現場、応用、対策」などのことばがあてはまります。「理論」から「現場」までの広範囲を対象にして、現場で何かしらの対策を講じようという内容を持っています。

 本講座では、平成20年3月に学部学生21名が巣立っていきました。進路は、公務員9名、進学7名、民間等5名です。それぞれが大きな夢と可能性を秘めて、講座で暮らした教育研究の成果を何かしら具体的にしていくことでしょう。


地域保全工学講座主任 教授 成岡 市



 

 環境情報システム工学講座

 

環境に優しく効率の良いシステムを創ろう!

 「環境情報システム工学講座」は、システム工学的手法を用いて,情報処理技術を駆使し,環境に優しい新しいシステムを創造する専門分野であり,幅広い知識を用いて環境改善や環境保全、また食料生産などの技術開発に貢献するための教育と研究を行っています。

  当講座は古い歴史と伝統を持っており,「農業機械学科」から「生物生産機械学コース」を経て,現在の「環境情報システム工学講座」へと変遷してきました。教育研究の幅も広くなりました。従来の機械システムの教育研究に加え,環境改善技術及び環境評価,情報処理技術を駆使した植物生育環境の計測と制御,持続可能な自然エネルギー利用システムの開発,バイオマス利用等に関する教育研究が展開されています。

  当講座は,低環境負荷型食料生産システムの開発を目的としているので,生物が対象となります。したがって,数学・物理の知識が不可欠で,生物の知識も必要です。高校で学んだ数物の基礎知識をさらに高め,電気工学,プログラミング,システムデザイン等の専門知識とスキルを身に付けるカリキュラムが組まれています。このようなカリキュラムは、現在の日本のあり方、進路と一致しています。その結果、毎年求人倍率は高く、就職内定率も100%を維持しています。平成19年度には22名の卒業・修了者に対し,96社が求人に来ています。いかに本講座の教育方針が社会のニーズに応えているかは分かります。

  最後に,環境に関心を持ち,環境改善技術やシステムデザインのスキルを身に付けて,社会に貢献したい人たちには、当講座をお勧めします。

 

環境情報システム工学講座主任 教授 王 秀崙


 

 森林資源環境学講座


今,森林が面白い

  森林は地球環境の維持に大きな役割を果たすと同時に,再生可能な資源として人間の生活に必要な資材を提供しています。さらに,国土保全・水源涵養・気象条件の緩和などの環境調節ばかりではなく,森林が形成する緑地空間や木材を豊富に使った建物が人間に精神的なやすらぎを与えるなど,森林は物心両面で私たちの生活に貢献しています。

  世界的に見ると森林面積は陸地面積の約30%ですが,日本は国土の67%が森林で覆われています。これは自然にそうなったのではありません。森林の重要性を認識し,それを慎重に育成,利用,管理してきた先人の英知と技術の結果です。テレビのニュース映像を見ていると,樹木がほとんど見られない国が多いことに気がつくでしょう。三重大学の森林資源環境学講座では,この恵まれた資源を末永く保護し,かつ有効に活用していくため,数学,物理,化学,生物といった基礎科学の知識,そして社会学や経済学などの社会科学,さらに土木,建築,応用化学などの工学の知識を総動員して研究を行っています。
  森林資源環境学講座はとても間口が広く,奥行きのある講座です。入学後じっくり自分の適性にあった研究室を選択し,そして研究室分属後,そこでの高度な専門教育を受けることによって将来の職業に対する展望が開けてくるでしょう。

  森林は地球環境や人間の健康な生活だけでなく,現在社会を支えるエネルギー・物質と直接密接な関連があります。 石油,石炭に代表される化石資源もその重要なルーツは森林です。地球外のエネルギー(太陽光)により炭酸ガスと水を原料として循環する森林は,化石資源に依存しない持続的社会において,まさに環境,物質,エネルギーの全てをになう重要な資源です。森林資源環境学講座の重要性は,これからますます高まるでしょう。

  これから大学に入学して森林について学びたい人,入学したが進路に迷っている人,次のようなことに興味のある人, ぜひ森林資源環境学講座の各研究室を訪れてください。そこには全く想像もしなかった未来の森林があるでしょう。

1) フィールドでの樹木や植物の生態観察,植物の生理作用に興味がある。
2) 森林と人間生活・社会との関連を多面的に研究したい。
3) 森林と災害の関係や,地球規模での水の循環を研究したい。
4) 木質資源や環境資源としての森林を人間のために利用するシステムを研究したい。
5) 自然環境を乱すことの少ない材料である木材を豊富に使った建築に興味がある。
6) 森林の分子を活用し,石油に匹敵する,そしてそれに勝るハイテク材料を誘導したい。
7) 物理系,化学系,生物系,社会系いずれにするか迷っている。

 

森林資源環境学講座主任 教授 舩岡正光


 

 自然環境システム学講座


 地球システムと人間活動 ようこそ、自然環境システム学講座へ。

 三重大学大学院生物資源学研究科(生物資源学部)のなかの共生環境学専攻(共生環境学科)のなかにあって、当講座では海洋から陸地、森林、大気まで切れ目なく(シームレスに)研究対象としております。地球規模の問題から、三重県内、あるいは流域内のようなローカルな課題まで、また、理論的研究から人間や生物の活動に関する分析、防災や環境保全活動まで、多岐にわたって扱っております。

 三重大学への入学試験や入学後の講座分属に際して、当講座に関心を持っていただいた方、是非当講座のサイトをあちこちのぞいてみて下さい。5つの分野からなる研究室において、上述しました多岐にわたる教育研究活動を見ていただけることと思います。

 私自身は「森林計画学」を専攻しております。森林資源の計画的な利用や保全に関して、森林資源の測定、森林情報の利用などから森林の持つ多様な機能を評価し、「持続可能な森林経営」を目指しています。この課題の実践には、森林の調査、評価、成長予測、計画、実行、照査という一連の過程が必要であり、森林資源の現況調査と成長予測、森林情報の集約と照査プロセスに必要な基準・指標について、国際動向や多目的な環境モニタリングを考慮しながら森林計画を立案する手法を検討しています。最近の話題では、森林の整備水準を評価し、地域の森林管理を進めていく手法として「森林認証制度」や「森林GIS」の応用に関する研究を進めています。また、県内や海外における調査森林において、森林成長の解析、住民参加による森林管理手法の研究も進めており、特に地球温暖化対策として、住民にも有益な海外植林事業をCDM植林事業として実行できないか検討しています。

 自然環境について、基礎から応用まで幅広く学びながら、我々と一緒に「エコロジカルな生活」について考えてみませんか。どこかの研究室で、あなたの知的好奇心を満足させる、アカデミック・マインドに遭遇することができるでしょう。

 

自然環境システム学講座主任 教授 松村直人


 

 共生環境学専攻 博士後期課程(博士課程) 

 

 環境保全学講座

 

環境保全学講座

 共生環境学専攻の博士後期課程は,プロジェクト形研究組織の良い面を取り入れ,課題解決を意識するとともに,教員相互の連携・研鑽をはかる目的で,平成17年度より組織変更し,環境保全学講座と環境創成学講座の2つの講座で組織されています.このうち,当環境保全学講座は,自然環境や生活環境を保全した上で,自然災害から人間社会を守ることを目的に,自然の持つ多面的機能の分析,環境モニタリング,環境変動メカニズムの解析,自然災害発生予測とその対策,災害時の復興対策技術の開発等の研究を通じて,危機管理システムの構築と施策について,環境動態保全学,地域災害管理学,環境総合解析学の3つの教育研究分野に分かれて教育研究を行っています.

 現在,東海,東南海,南海地震等の大規模地震の発生の可能性だけでなく,異常気象による集中豪雨等の災害も懸念され,自然環境保全を考慮に入れたより進んだ自然災害から社会を守る施策,並びに技術開発の必要性が叫ばれていいます.これらの問題を解決するためには,従来の個々の研究毎の対応ではなく,様々な方面からの情報を分析した多方面に渡る研究を行う必要があります.当講座では,多岐にわたる研究分野のスタッフとともに,他講座,他専攻,あるいは官公庁,産業界と連携をはかり,積極的に環境保全,防災対策・管理システムに対する問題解決に向けたプロジェクトを推進しています.

 

地域保全学講座主任 酒井 俊典

 

 

2007年度

 

 共生環境学専攻を代表して

 

 平成 19 (2007) 年度のご挨拶

 生物資源学部共生環境学科および大学院生物資源学研究科共生環境学専攻(これら学科・専攻の組織をまとめて、以下「共生環境」と書くことにします)を代表いたしまして、平成19年度の決意のご挨拶を申し上げます。

 「共生環境」には、40数人の教員・事務職員が配置され、学部と大学院博士前期課程に、4講座(地域保全工学、環境情報システム工学、森林資源環境学、自然環境システム学)、20教育研究分野があります。また、博士後期課程に、2講座(環境保全学、環境創成学)、6教育研究分野があります。

  この「共生環境」で、およそ500人ほどの学生・院生が、学問の手ほどきを受けています。明日を夢見る若者達が、「共生環境」の門をたたき、入学し、修学し、生活し、そして卒業・就職するまでの間、毎日のように顔を合わせ、挨拶を交わし、苦楽を共にして、巣立っています。

  「共生環境」に所属する若者達は、たしかに「大学という学術の中心にあって、広く知識を受け、専門の学問を深く指導され、それをもとに研究し、知的かつ道徳的能力を自ら拓く」ことを実体験しているはずです。多くを学んでいますが、それはけっして模倣ではないはずです。形式より実力主義を重視した教育を受け、応用科学の知識や技術の理論的解明が尊重される分野で創造性豊かに育っているはずです。

 人々が生きていく上で欠かせぬ「生物資源」は、この学部・大学院の中心課題ですが、生命の根源を追究しつつも未だに不明なことが多く、生物資源を対象として展開される教育研究のほとんどは自然条件・自然環境に委ねた事柄が多いというのが実状です。このことに「共生環境」はどのように取り組むのか、それがこの学科・専攻の中心課題となっています。

  このため、「共生環境」は、大きく分けて4つの「学問体系」に分類されています。すなわち、地域保全工学、環境情報システム工学、森林資源環境学、自然環境システム学であり、ちょうど4つの講座組織によって体系づけられています(各講座の内容につきましては、関連ページをご覧ください)。この4つの体系は、おのおの個別に独立したものではなく、「環境・工学・システム」の3つのキーワードを含む「科学と技術」を共通課題に持つ仲間達の集団よりなっています。

  一定の決まった目的・方法・原理によって多くの知識を集め整理して体系的にまとめた「科学」が天秤の一方に置かれるならば、そのもう一方に「技術」が置かれ、理論を実際に応じて移す技(わざ)が磨かれます。生物資源学部・研究科のような応用科学を専らにする分野では、このことは最も重要かつ根本的な教育研究のあり方になりますが、「共生環境」ではとくに「科学」と「技術」の間に「環境・工学・システム」を並べて取り組んでいることが特徴です。つまり、生物資源という複雑な課題に対して、環境という大きなスケールを充てて、工学という動的な認識を行い設計を施し、それらを総合的にまとめたシステムを構築する、というのが「共生環境」における教育研究の意義と役割ということになります。

 最近の大学を取り巻く情勢では、大学という存在があらためて問われ、学生という人材が予想を超えて多様化し、評価という採点表に一喜一憂し、長きにわたって築かれてきた歴史や伝統がさらに大きく崩されようとしています。大学の内と外に、覚悟の改革が求められているのです。そして「共生環境」にも、強い自律が求められています。

  そうはいっても、真剣の中にも笑顔がなければなりません。「共生環境」に配置されている40数人の教員・事務職員は、仲間集団の意識を強くしています。今年度の「共生環境」には、少し変化があるかもしれません。

 本年度の決意のご挨拶文になりましたかどうか、とりいそぎ・・・

共生環境学専攻 専攻長 教授 成岡 市


 

 地域保全工学講座

 

 地球は自然豊かな美しい星です.

  この地球には,水・土・空気が存在し,人々は,今までこれらを使って生きてきました.また,これからもこれらを使って生きていかなくてはなりません.

  しかし,今,これらの調和が崩れ始めているようです.人々は,文明を作り上げた時代から,食料生産を増やし,建物を造ることが必要になりました.人口が増えるにつれ,水・土・空気のような自然環境を少しずつ取り壊して,農地や都市を拡大してきました.

  現在,地球上の多くの地域では,自然のことをよく考えなかったため砂漠化が進んでいます.しかし,日本では,弥生時代頃から,2000年近くもほとんど変わらない水田農業を続いてきています.これは大変誇りにできることだと思います.

  日本で持続的な農業が続けられてきた理由として,温暖・多雨といった気候的要因はあるでしょうが,それ以上に,日本人の心の中に無理のない共生型社会を続け,少し不便でも自然を大切にする「もったいない」の意識につながる精神があるからだと思います.

  高度成長の時代,日本でも欧米の文化や技術を導入し,便利さだけを優先して自然や環境をないがしろにしてきました.
  地域保全工学講座は,「農業土木」と呼ばれる専門分野の一つであり,この分野でも高度成長の時代,便利さを優先した事業が一部で進められてきました.しかし,本来,我々農業土木は「少しの不便」を認め,メダカが泳ぐ用水路や,魚釣りができるため池,すばらしい景色の棚田といった日本の原風景を作り上げることに手助けしてきた,便利さだけを優先せず,農業・環境・地域といった水(ミ)土(ド)里(リ)を考えることができる分野です.これは,自然を少し犠牲にしても,安全・快適・便利な生活を優先する一般の土木の考え方と大きく違っています.

  本講座は,三重大学の前身である三重高等農林専門学校,農業土木科の歴史を引き継ぐ伝統のある講座で,現在,田園計画学,土資源工学,水資源工学,流域保全学,環境施設工学の5つの教育研究分野からなっています.本講座では,安全・快適に加え,本来農業土木が持っている,環境と共生した生活空間を創造・保全する考え方を基本に,美しく豊かで住みやすい地域・地球を築くためにはどうすれば良いかについて教育・研究を行っています.

地域保全工学講座主任 教授 酒井俊典



 環境情報システム工学講座

 

「新しいシステムを創造する」ことによって環境保全社会を実現しよう!!


  「環境情報システム工学講座」の考え方をお話しすることにより、学外の方々、受験生、あるいは新入生の皆様に対するご挨拶とさせていただきます。

  当講座は、共生環境学専攻(学部までの組織は共生環境学科)の中にあり、環境・情報・システム工学という3本柱の学問・知識をもって、広く環境改善や環境保全、また食料生産などの技術開発に貢献するための教育と研究を行っています。

  多くの皆さんは、「環境」と聞くと、保全されるべき環境の姿や、希少生物の種の保存を思い浮かべるのではないでしょうか。それらを知り、研究することは、環境を保全しようとする私たちにとって重要な課題です。しかしもう一つ忘れてはならないことは、私たち人間が、地球環境の中で文化的な生活を持続して生存してゆかなければならないということです。

  そのためには、今までのエネルギー浪費型の手法に取って代わる、無駄が無く環境に負荷を与えない技術、あるいはもう少し大きく、低環境負荷型の社会システムを構築していく必要があるのです。このような技術やシステムは、いずれも現代の科学技術の中で最先端のものであり、「想像力」という力が備わっていなければ造り出すことはできません。

  私たちの講座で教育・研究の対象となるものは、生物を含め多種多様で、なにか一つのものに限定されるということはありません。その代わりに、この「想像力」をキーワードとして掲げたいと思います。具体的な教育・研究の例は、当講座のホームページにありますが、主な研究テーマとしては

  ○環境の計測・評価に関わる技術
  ○生物や食料生産環境の改善に関わる技術
  ○生物や食料生産環境の保全に関わる技術
  ○最先端のシステム・情報技術の応用

のようなものを挙げることができます。

  このような姿勢は、現在の日本のあり方、進路と一致するところです。その結果、毎年求人倍率は高く、就職内定率もほぼ100%を維持しています。

  特に、新しく自ら進むべき学問分野を探している人たちには、当講座において、卒業後も一生役に立つ想像力という力を身につけることをお勧めします。

環境情報システム工学講座主任 教授 佐藤 邦夫


 

 森林資源環境学講座


 今、森林が面白い

 森林は地球環境の維持に大きな役割を果たすと同時に、再生可能な資源として人間の生活に必要な資材を提供しています。さらに、国土保全・水源涵養・気象条件の緩和などの環境調節ばかりではなく、森林が形成する緑地空間や木材を豊富に使った建物がそこに居住する人間に精神的なやすらぎを与えるなど、森林は物心両面で私たちの生活に貢献しています。

 ところで、世界的に見ると森林面積は陸地面積の約30%ですが、日本は国土の67%が森林で覆われています。たいへん森林資源に恵まれた国です。テレビのニュース映像を見ていると、樹木がほとんど見られない国が多いことに気がつくでしょう。三重大学の森林資源環境学講座では、この恵まれた資源を末永く保護し、かつ有効に利用していくために数学、物理、化学、生物といった基礎科学の知識とともに社会学や経済学などの社会科学、あるいは土木、建築、応用化学などの工学の知識も総動員して研究を行っています。

 森林資源環境学講座はとても間口が広く、奥行きのある講座ですから、入学後じっくり自分の適性にあった研究室を選択することができます。研究室分属後は、それぞれの専門教育が充実していますので、将来の職業に対する展望が開けてきます。

 森林は地球環境や人間の健康な生活と密接な関連がありますから、将来さらに森林資源環境学講座の重要性が増していくと考えています。
  これから大学に入学して森林について学びたい人、入学したが進路に迷っている人、次のようなことに興味のある人、ぜひ森林資源環境学講座の各研究室を訪れて、実際に研究室の雰囲気を肌で感じてください。

1) フィールドでの樹木や植物の生態観察、植物の生理作用に興味がある。
2) 森林と人間生活・社会との関連を多面的に研究したい。
3) 森林と災害の関係や、地球規模での水の循環を研究したい。
4) 木質資源や環境資源としての森林を人間のために利用するシステムを研究したい。
5) 自然環境を乱すことの少ない材料である木材を豊富に使った建築に興味がある。
6) 化学成分の宝庫である木質資源を、化学的に有効利用する研究をしたい。
7) 物理系、化学系、生物系、社会系いずれにするか迷っている。

 

森林資源環境学講座主任 教授 齊藤昌宏


 自然環境システム学講座


 地球システムと人間活動 ようこそ、自然環境システム学講座へ。

 三重大学大学院生物資源学研究科(生物資源学部)のなかの共生環境学専攻(共生環境学科)のなかにあって、当講座では海洋から陸地、森林、大気まで切れ目なく(シームレスに)研究対象としております。また、地球規模の問題から、三重県内、あるいは流域内のようなローカルな課題まで、理論的研究から人間や生物の活動に関する分析、防災や環境保全活動まで、多岐にわたって扱っております。

  三重大学への入学試験や入学後の講座分属に際して、当講座に関心を持っていただいた方、是非当講座のサイトをあちこちのぞいてみて下さい。5つの分野からなる研究室において、上述しました多岐にわたる教育研究活動を見ていただけることと思います。

 私自身のその頃を振り返ってみますと、四国徳島県の吉野川北岸地域で育ち、東は渦潮で有名な鳴門の海、南には剣山、高越山などの山々、西も秘境と呼ばれる祖谷地方、そして何より「四国三郎」吉野川の豊かな流れという自然に恵まれた生活をしておりました。大学も単純に「自然が好き」というだけの理由で、将来の就職や社会人のイメージなども深く考えることなく農学部林学科を選びました。そのまま「森林」に関係する職業につくとは考えてもおりませんでしたが。思えば、小学校以来、たくさんの先生、先輩後輩、友人との出会いや助言に恵まれて、あるいは多くの反面教師にも出会い、今の自分があると思います。高校生の段階で、明確な人生設計のできる人など、そういないでしょう。いろんな偶然と幸運による微調整に任せながらも、自分の決断で一歩一歩進んでいくものと思います。

 今日このサイトを訪れていただいたみなさん、「ツイて」います。21世紀は「環境の世紀」といわれます。自然環境について、基礎から応用まで幅広く学びながら、我々と一緒に「エコロジカルな生活」について考えてみませんか。どこかの研究室で、あなたの知的好奇心を満足させる、アカデミック・マインドに遭遇することができるでしょう。

 

自然環境システム学講座主任 教授 松村直人


 

 共生環境学専攻 博士後期課程(博士課程) 

 
 環境保全学講座

 

 共生環境学専攻の博士後期課程は、平成17年度から大きく組織変更となりました。本専攻は、博士前期課程までは学部と同一の講座組織となっていますが、博士後期課程においては別講座を組織することとし、プロジェクト形研究組織の良い面を取り入れ、課題解決形を意識すると共に、教員相互の連携、研鑚を高めたいと考えております。

 本専攻は二つの講座から構成されていますが、ここではその一つの環境保全学講座について紹介いたします。当講座は、防災、安全などを解決課題に据え、環境動態保全学、地域災害管理学、環境総合解析学の3つの研究分野において教育研究を行っています。

 環境は、人間と自然、相互の影響と貢献により形成されますから、当講座で意識する環境とは自然環境のみならず、人工環境も含まれます。人工環境の中には、造成物、構造物、人工林などが含まれますが、さらに、社会環境、生活環境の課題も併行して出てまいります。

 これら広汎な環境問題に取り組み、課題を解決するためには、自然の持つ多面的機能の分析,環境モニタリングを行い、環境変動のメカニズムの解析を行う必要があります。人工環境、社会環境、また、産業を含む生活環境についても様々の環境要素からの情報を解析する必要があります。

 この結果に基づき、自然環境や生活環境を守り,自然災害等から人間社会を守る技術並びに施策について提言をしてまいります。地震、水害等による災害の予測と発生時の対応,復興対策およびその技術の開発等の研究を行います。また、これら全般の危機管理システムの構築と施策についての研究を行います。

 当講座においては、課題が多所多岐にわたるため、研究の過程では、当講座内のみならず、他講座、他専攻、学内、他大学、官公庁、産業界とも連携をとり、積極的にプロジェクトを推進する所存です。

  何とぞご支援の程、よろしくお願いいたします。

 

環境保全学講座主任 教授 村上 克介

 

 環境創成学講座

 

次世代のための共生環境学の構築を目指して ようこそ、環境創成学講座へ。

 当講座は修士課程までの共生環境学専攻から、さらに博士後期課程に進学して研究者、あるいは高等技術者を目指す方たちのために提供されています。研究者や高等技術者など、その分野の専門家と呼ばれる人々の務めとはなんでしょうか。それまでの常識を覆すような仮説を提唱すること、新たな研究分野を切り拓くこと、その分野の専門知識を蓄え、一般に利用しやすい形で提供すること、一定の学識や技術者倫理を持った社会人として貢献すること、などなど様々な役割が期待されていると思います。

  当博士講座は学部、大学院修士課程の一貫教育から、各研究分野がフュージョンした形で、次の3つの教育研究分野から構成されています。

  循環系物質創成学
  流域環境創成学
  環境情報システム創造学

 修士課程までの教育が、例えば「課題曲」の演奏を習得することであるとすれば、博士課程においてはさらに多数の楽曲を演奏できるようになること、あるいは「大交響曲」の作曲までも成し遂げることに喩えられるかもしれません。そのような成長の手助けをしたいと思っております。

 また、一度社会に出て、もう一度、環境について勉強したいという知的好奇心にあふれる方、勉強を始めるのに、遅すぎることはありません。経験豊富で、幅広い視野を持った社会人の方の入学は、学生にとっても非常にいい刺激となりますので、歓迎致します。まだ授業の形態、研究指導の体制など、十分な受け入れ態勢が整っておりませんが、順次より学び易い体制に変えていくことを試みております。

 さらに、地域連携課題や国際共同研究、海外からの留学生との交流など、幅広い経験と高度な学識を体得していただける環境を整備していきたいと考えておりますので、今後とも関係各位のご協力、ご支援をいっそうお願いする次第です。

 

環境創成学講座主任 教授 松村直人

 

 

2006年度

 

 共生環境学専攻を代表して

 

 共生環境学専攻のホームページをお訪ねいただき、大変ありがとうございます。

 皆様の中には、『専攻』という言葉が聞きなれないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。今まで「生物資源学部 共生環境学科」と呼ばれていた私たち教員の組織が、『生物資源学研究科 共生環境学専攻』という、大学院に重点をおいた組織に生まれ変わったのです。詳しくはこのご挨拶の最後にまとめさせていただきますが、まずは私たちの教育と研究の内容について少しご説明させていただきたいと思います。

 当専攻は、『生物資源の持続的生産と利用、そして生物資源が存在しうる環境と人間活動の調和』をめざす『生物資源学』という学問体系の中にあって、特に『自然と人間が共生する環境を計測・保全し、さらに環境改善に役立つ技術を創出・開発する』ことを目的としています。したがって私たちは、関係学問を駆使し、環境に関連する諸テーマによって生物資源学を推進する立場にあります。また単なる環境の計測にとどまらず、いわば『行動する環境学』を実践するために、教育や研究において利用する基礎的な学問分野は、数学、物理、化学、生物学、語学等々多岐にわたります。
私たちの専攻の中には教育・研究の対象をさらに絞った4つの講座があります。学部学生は2年次にあがるときに講座に分属します。以後、専攻(学科)全体としての教育・研究や学生支援が継続されますが、専門教育と研究は、主にその講座において行われます。各講座の詳細なご紹介は、各講座のホームページをご覧いただくとしまして、ここでは専攻全体をご理解頂くため、各講座の研究対象について触れたいと思います。

 まず地域保全工学講座は、「地域(主に都市部以外)の基盤(土地)と水」を主対象としています。次に、森林資源環境学講座では、「森林やその基盤である山間地、およびその生産物である木質素材」を主対象としています。また、自然環境システム学講座では、「地域から地球規模までの幅広いレンジの自然環境」を主対象としています。これに加えて、環境情報システム工学講座は、情報工学やシステム工学などの手法を駆使し、「環境を改善する新しいシステムを創造すること」を主眼としております。これらのように、当専攻では、海から山までの広大な領域を対象とし、現代の先端を行くあらゆる手法・知的情報を駆使しながら教育・研究を進めています。

  その結果として、当専攻(学科)の学部卒業生および大学院修了生は、常にアップトゥデートな(最新の情報を含んだ)人材として世の中に受け入れられておりまして、この傾向は地球規模の環境問題の注目度が高まりを見せている中で、今後ますます加速されるものと考えられます。

 このような環境関連の教育・研究を高度に進め、同じ理念を共有するさらに多くの学生諸君を教育・輩出していくためには、私たちの組織を高度化する、すなわち大学院レベルの教育・研究に重点をおく(大学院大学化する)ことが必要となったわけです。

  ここで、私たちの専攻に関連する、大学院大学化の意味についてまとめておきましょう。三重大学生物資源学部の組織が、大学院大学化により、今年度から『三重大学大学院生物資源学研究科』となりました。これに伴い、私たちの組織も、今までの共生環境学科から『共生環境学専攻』に生まれ変わりました。また所属する学部1年次生から4年次生は『三重大学 生物資源学部 共生環境学科』に所属していますが、大学院博士前期(修士)課程学生の全て、また今年度進学した大学院博士後期課程の学生からは『三重大学大学院 生物資源学研究科 共生環境学専攻』に所属します。
このように、大学院に重点を置いた「大学院大学化」ですが、振り返ってみますと、もともと私たちは大学院レベルの教育を目指してきましたので、従来、共生環境学科から大学院へ進学する学生の割合も多かったのです。従いまして、今回の大学院大学化は、「これからも学部とそれに続く大学院の教育・研究をさらに充実させようとの決意を新たにし、行動を加速するもの」と位置付けられます。

  在学の学部および大学院学生諸君には、このような変革の中にある私たち教員とともに、学科・専攻の教育を通し『行動し、考え、働きかける環境学』を修得して頂き、真に社会から必要とされる有意な人材として育っていただきたいと思います。
また、学外の皆様にはこれらのことにご理解をいただき、輩出される卒業生、修了生を含め、私たちのこれからの努力とその結果にご期待を賜われば幸いです。

 以上簡単ですが、私たちが大学院大学化して初めて迎えた新しい年度のご挨拶とさせて頂きます。
ありがとうございました。

 

共生環境学専攻 専攻長 教授 佐藤邦夫

 

 地域保全工学講座

 

 地域保全工学講座へようこそ
 -決して古くない、最先端の地域貢献と人材育成-

 皆様、ごきげんよう。
  ご挨拶もそこそこに、早速当講座における教育・研究への取り組み方のご紹介をいたします。

 地域保全工学講座では、「農業土木プログラム」(JABEE;Japan Accreditation Board of Engineering Education)を中核にした教育・研究を推進していますので、とくに次のような人を求め、育てようと考えています。

 「人や自然そして社会あるいは生物資源や地域の社会的生産基盤について、

  ■ 企画力、実行力、技術力あるいは総合力を身につけ、それらへの貢献を重視するひと。
  ■ 専門性や論理性を重視し、向上心の発揮を重視するひと。
  ■ 開発や利用および保全などについて問題の解決能力を重視するひと。
  ■ 豊かな感受性と愛情および多面的な視点を重視するひと。
  ■ 必要な語学能力や、表現力、コミュニケーション能力を重視するひと。」

 この「求めたい、育てたい」という願いを実行するために、当講座では、講座の学習・教育目標に次のような8項目を立てて教育・研究に取り組んでいます。

 □ 「幅広い教養と国際性」:グローバルかつ広範囲な視点に立ち、国や地域ごとに異なる自然や文化を広く認識し、それらが共存・調和できるための自然・社会・人文科学に関する教養を身につけ、個人との関わりを大切にし、国際的に受信・発信できる基礎的なコミュニケーション能力を身につけるための教育・研究。

 □ 「技術者倫理」:地域整備・保全を目的とした公共事業の現場を実体験し、事業で現在および将来、解決が求められている諸問題についての広い知識を持ち、事業が自然環境や人間社会に与える影響・効果の大きさを強く認識し、それに関わる技術者の役割と責任を自覚し、技術者としてとるべき姿勢・態度を身につけるための教育・研究。

 □ 「科学的アプローチ」:専門技術の基礎となる数学、自然科学、情報技術の知識を習得し、自然環境における緒現象の数学・科学的な把握と記述、データの収集・伝達方法を身につけるための教育・研究。

 □ 「専門知識とその応用」:自然と調和の取れた地域整備・保全を目的とした事業に必要な計画・設計手法、それらの基礎となる水・土・構造物に関する基礎的な知識・理論を習得する。特に構造物の設計・施工に関する科目を重視し、ものづくりや維持管理の現場で直接役に立つ知識を習得するための教育・研究。

 □ 「課題の設定と専門知識の適用」:実験や実習等を通して、講義で修得した専門知識が、実際の地域整備・保全に関する諸現象の解明や事業の実施にどのように用いられるかを理解し、専門知識を用いて実際の問題を自ら解決する能力を修得するための教育・研究。

 □ 「的確な発表と説明」:専門技術に関わる問題について、必要な情報をわかりやすく記述する能力、みずからの考えを論理的に展開し記述する能力、多数の聴衆の前で限られた時間内に論点をわかりやすく説明する能力、そのための説明資料の作成能力、相手の考えを適切に理解し質問・討議する能力を身につけるための教育・研究。

 □ 「自主的・継続的な学習」:課題を解決するために必要な知識や情報を得るための方法を理解・体得し、自主的、継続的に学習できる能力を身につけるための教育・研究。

 □ 「課題への計画的な取組み」:実験や実習等を通して、専門技術に関わる問題について、与えられた時間や予算、入手可能なデータ等が制約される条件下で、長期的・短期的に計画を立てて仕事を遂行し、必要が生じた場合は計画を変更し、期限内に最良の成果をあげる能力を身につけるための教育・研究。

 以上の教育・研究への取り組み姿勢に熱い声援を送ってくださっているのが、数え切れないほど多くの卒業生であり、そして伝統と歴史を持った同窓会があります。

 この講座では、関係者一同、築かれてきた教育・研究の永い歴史の中途を歩んでいるものと思い、しかしながら常に新しい時代を直視しながら、決して古くない最先端の地域貢献と人材育成を目指して、日夜奮闘努力しています。

 

地域保全工学講座主任 教授 成岡 市

 

 

 環境情報システム工学講座

 皆様、本ウェブサイトへようこそ。

 皆様には日頃より当講座の教育と研究に対し温かいご理解とご支援を頂き、心から感謝申し上げます。

  私たち人類が、他の生物と共生し持続可能な発展を図るためには、環境問題を解決し、環境に負荷を与えない方法で、あるいは環境負荷が最小な方法で食料や生活資材を含む生物資源を安定的に確保する必要があります。当講座では、環境改善に関連する各種プラントおよび環境共生技術、即ち「環境」・「情報」・「システム工学」に関して幅広い基礎・応用知識の教育および研究を行い、科学技術の高度化・統合化などによる社会や産業の変化に柔軟かつ適確に対処できる技術者と研究者を育てようとしています。

  当講座の教育研究内容は生物学と工学との架け橋の役割も果たし、学生は当講座で生物環境学、環境工学、設計工学、情報工学などの多分野をカバーする知識、および新しいシステムを創造する能力を身につけます。

  さらに、当講座は、高い能力を持って広く社会に貢献できる技術者を育成するために、2005年度から森林資源環境学講座と連携して、日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation Board of Engineering Education: JABEE)の基準に準拠して構成される「共生環境学」という教育プログラム(「共生環境学プログラム」)を試行しています。具体的な内容についてはぜひ当講座のホームページをご覧頂きたいです。

  当講座の就職状況については、景気の好不況に関わらず、関連企業からの求人倍率が高く、毎年、就職内定率はほぼ100%を保っています。これは当講座の教育研究内容が社会のニーズに合致していると思います。

  今後も、私共教職員一同は、皆様のご期待にこたえるように努力して行きたいと存じますので、皆様方の益々のご支援を頂きますよう、宜しく御願い申し上げます。

 

環境情報システム工学講座主任 教授 陳山 鵬 

 

 森林資源環境学講座


 今、森林が面白い

 森林は地球環境の維持に大きな役割を果たすと同時に、再生可能な資源として人間の生活に必要な資材を提供しています。さらに、国土保全・水源涵養・気象条件の緩和などの環境調節ばかりではなく、森林が形成する緑地空間や木材を豊富に使った建物がそこに居住する人間に精神的なやすらぎを与えるなど、森林は物心両面で私たちの生活に貢献しています。

 ところで、世界的に見ると森林面積は陸地面積の約30%ですが、日本は国土の67%が森林で覆われています。たいへん森林資源に恵まれた国です。テレビのニュース映像を見ていると、樹木がほとんど見られない国が多いことに気がつくでしょう。三重大学の森林資源環境学講座では、この恵まれた資源を末永く保護し、かつ有効に利用していくために数学、物理、化学、生物といった基礎科学の知識とともに社会学や経済学などの社会科学、あるいは土木、建築、応用化学などの工学の知識も総動員して研究を行っています。

 森林資源環境学講座はとても間口が広く、奥行きのある講座ですから、入学後じっくり自分の適性にあった研究室を選択することができます。研究室分属後は、それぞれの専門教育が充実していますので、将来の職業に対する展望が開けてきます。

 森林は地球環境や人間の健康な生活と密接な関連がありますから、将来さらに森林資源環境学講座の重要性が増していくと考えています。
  これから大学に入学して森林について学びたい人、入学したが進路に迷っている人、次のようなことに興味のある人、ぜひ森林資源環境学講座の各研究室を訪れて、実際に研究室の雰囲気を肌で感じてください。

1) フィールドでの樹木や植物の生態観察、植物の生理作用に興味がある。
2) 森林と人間生活・社会との関連を多面的に研究したい。
3) 森林と災害の関係や、地球規模での水の循環を研究したい。
4) 木質資源や環境資源としての森林を人間のために利用するシステムを研究したい。
5) 自然環境を乱すことの少ない材料である木材を豊富に使った建築に興味がある。
6) 化学成分の宝庫である木質資源を、化学的に有効利用する研究をしたい。
7) 物理系、化学系、生物系、社会系いずれにするか迷っている。

 

森林資源環境学講座主任 教授 齊藤昌宏


 

 自然環境システム学講座


 受験生,新入生をはじめとし,共生環境学専攻のウェブサイトを訪問してくださっている皆様,ありがとうございます.

 私ども,自然環境システム学講座のご案内をさせていただきます.我々の講座では,環境科学というキーワードで結ばれた5つの分野(大学の基礎的単位)が,教育研究を行っています.つまり,「地球環境気候学」「海洋気候学」「水域環境学」「緑環境計画学」「環境解析学」です.それぞれの分野で何を研究しているか,教育研究しているかを,教員紹介のページ(http://www.bio.mie-u.ac.jp/kyoukan-list.html)をじっくり眺めて下さい.まず,各教員の名前をクリックします.出てきた教員紹介のうち,特に重要なのは「所属学会」と「主な業績等」です.

 最近のweb技術の発達で,色々な組織が,自己PRを,非常に綺麗に行なうようになってきました.しかし,そのPRが足りないからか,もしくはPRが過ぎる故なのか,毎年,どこの大学・学部・学科・講座・分野でも,「自分のやりたいことはこういうことではない」という学生が出てきます.お恥ずかしい話ですが,当学科にも,当講座にも,過去にそういう人がいました(もっとも,大抵は,途中で教育内容に満足していただくようになっています).

 「所属学会」を見ると,各教員のカヴァーする大雑把な学問分野がわかります.その大雑把な学問分野から外れた教育を受けるのは,デフォルトではないということになります.また,大学は,過去脈々と語り継がれてきた,10年前,20年前の研究成果の紹介をするだけの場所ではありません.最新の(できれば教員自身の)研究成果を併せて指導するところです.そのためには,研究業績が必要です.また,その分野に所属したらどういう研究が行えるか,各教員の業績から判断できます.

  最後に,「他の3講座と違って,なぜ,『日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation Board of Engineering Education: JABEE)認定プログラム』の紹介がないのか?」というご質問をよくいただきますが,我々の講座を志望する学生にとっては,それを用意するメリットがないと考えている,というのが,主な理由です.もちろん,他の3講座においては,この制度が十分機能していることは,言うまでもありません.

 

自然環境システム学講座主任 教授 葛葉泰久


 

 共生環境学専攻 博士後期課程(博士課程) 

 
 環境保全学講座

 

ご挨拶


 共生環境学専攻の博士後期課程は、平成17年度から大きく組織変更となりました。本専攻は二つの講座から構成されていますが、ここではその一つの環境保全学講座について説明しましょう。環境保全学講座の公式な説明は次のようになっていますので、ご覧下さい。
 
 「自然環境や生活環境を守り,自然災害から人間社会を守る施策についての教育研究を行う.自然を守り,災害を防ぐために,自然の持つ多面的機能の分析,環境モニタリングを行い,環境変動のメカニズムの解析を行う.また,自然災害の予測と発生時の対応,復興対策およびその技術の開発等の研究を行う.さらに,産業を含む生活環境についても様々の環境要素からの情報を解析し,危機管理システムの構築と施策についての研究を行う.」

 環境保全学講座は、さらに次の3つの研究分野に分かれて研究を行っています。

 環境動態保全学  地域災害管理学  環境総合解析学

 さて、このような研究体制は、2004年9月の三重県中南部を襲った台風21号に関連した豪雨災害によるところが大きいと思われます。私は、土砂災害関係の研究を行っていますが、ここでは、2004年9月29日の災害の調査経過について示し、研究がどのように進められたかをお話ししましょう。

 9月29日の災害当日の午前中、7時~12時頃まで三重県中南部一帯は豪雨に見舞われていましたが、津市周辺では朝は小雨程度でした。当日私達は、朝9時頃から治山砂防実習のため大学に集合し,2年生と共に大学のバスにて鈴鹿山地の朝明渓谷へ向いました。雨水で溢れる現地の渓流を見学した後、29 日夕方大学に帰って来ると、大学周辺も水浸しで 30 cm 程度もありました。夕方から各報道メディアは,三重県中南部(旧宮川村・旧海山町など)の災害報道で溢れていました。

 早速 30 日は、朝から雨量データの収集を大学院生と共に行い、時間雨量や連続雨量の異常さを確認し、豪雨と土砂災害の原因について議論をしていました。そのころNHKを中心とした報道は、土石流と斜面崩壊とを混同して宮川の災害はすべて土石流災害と報道していました。丁度10月2日夜にNHK津に呼ばれたので、斜面崩壊と土石流とは異なること説明し、滝谷の崩壊が尾根筋に発生した特殊な崩壊であることを伝えました。3日は旧宮川村の現場に調査に出掛け貴重なデータを入手することが出来ました。これは研究室における学生・院生などによるその後に調査にとって貴重な状況把握と経験を与えたものとなりました。

 このように災害は突然やって来ますが、その機会を逃さずに調査に出掛けるのが重要と改めて感じさせるものでした。是非院生の皆さんも、現場には足を向けてほしいものです。
 

 


環境保全学講座主任 教授 林 拙郎

 

 

 
 環境創成学講座

ご挨拶

 当大学の生物資源学部は、昨年度に部局化が認められました。誤認を覚悟でわかりやすく申しますと、部局化とは大学院を中心にした教育研究体制のことです。博士課程の体制もしたがいまして平成18年度には刷新されました。今年には、その新しい内容をここに紹介することになります。

 環境創成学講座では、安全・安心で持続可能な次世代社会に資する研究を行うことを目標として、理論と基盤技術の研究教育を行います。 「環境シンクタンク」、「地域防災」、「環境ボランティア」などを専攻全体の共通テーマに掲げ、地域との連携および産学官連携を重視しながら、高水準の教育研究レベルを維持することにより、安全で安心、なおかつ持続可能な次世代社会を創世することを目指します。

 当講座には3つの教育研究分野がありますが、それぞれの名前とテーマは次のようです。

■ 循環系物質創成学 教育研究分野

 「 地球環境に配慮した新しい循環型素材や材料に関する研究開発、及び生物資源の利用法」
 
■ 流域環境創成学 教育研究分野

  「自然環境の保全・修復と両立させながら、土地・森林・水資源を開発・利用するための計画・設計管理」

■ 環境情報システム創造学 教育研究分野

 「 計測・評価技術などの手法を用いて、地球環境への負荷に配慮しつつ、生命活動を支援するシステム」

 

 本年度に入学した学生からはこういった新しい研究分野のいずれかに所属して学習や研究を行うことになります。このあいさつ文を読まれている方々全員のご支援、ご協力をお願い致します。

環境創成学講座 主任 教授 加治佐隆光

 

 

 

2005年度

 

新年度のご挨拶

学科を代表して


  共生環境学科に入学の新入生の皆さん、受験勉強から解放され、ほっと一息、大学生活の1ヶ月はいかがでしょうか。また、4月から各講座に分属し、専門の勉強を始めた二年次学生諸君や三・四年次の学生諸君は新学期を迎え、心機一転、それぞれの目標に向かって力強く活動を開始されたことと思います。

 京都議定書が去る2月16日に発効したことは新聞等でご存知の方も多数おられることと思います。国連気候変動枠組条約発効から10年余り、京都議定書採択から7年余の年月が費やされました。わが国は地球温暖化防止のため、大気中の温室効果ガスの排出量を2008~12年時点で1990年比6%減の数値目標をかかげ、そのうち3.9%を森林経営による吸収量の確保で充当するとしていますが、現在の日本の森林・林業の状況ではその目標達成は容易ではありません。
21世紀は環境の時代だといわれています。そのような時代に対応していくためには、自然と人間との共生のための理論と技術を、さまざまな視野から学ぶことが大切です。

  地球環境学の観点からは、地球全体の大気や海洋、土壌、生物圏の仕組みと修復のための技術を、また、われわれが主に生活している河川の流域については、流域の地域環境の保全、水辺環境の整備、水や土地の有効利用、環境低負荷型農業のための理論や技術を、さらに、わが国土の三分の二を占める森林についても生態系と仲良く付き合いながら、森林を保全したり、石油にかわる資源として木材を利用したりする理論と技術を学びます。これらの環境学の基礎から応用までの学習をとおして、本学科では地球や地域の環境問題に対処し、自然環境と人間活動との共生関係を築いていく技術や能力を身につけた人材を養成していきます。

  共生環境学科は「地域保全工学講座」、「環境情報システム工学講座」、「森林資源環境学講座」、「自然環境システム学講座」の四講座で構成され、身近な環境のレベルから地域・地球環境のレベルまで、また、人文・社会科学的な分野から生物・物理・化学・工学的な分野まで非常に幅広い分野・レベルで研究を進めているユニークな学科ですから、学生諸君は、必ず、自分の興味・得意分野に合致した所属教育研究分野が見出せ、3年次後半あるいは4年次から卒業研究に着手できます。

  研究分野選択や勉学・生活上の悩み、進路相談等ありましたら、一人で悩むことなく、早めに、各学年の就学カウンセラーは言うに及ばず各講座の先生方の研究室を遠慮なく訪ね、相談してください。本学科の先生方は学生諸君の面倒見は良く、必ず解決策が見出せるはずです。

  4月から学科長の任務に当たっている私の所属講座は森林資源環境学講座ですが、森林とのかかわりのきっかけは昭和28年の災害です。一ヶ月半の間に2度の風水害に見舞われ、私の住む伊賀市で大きな被害が発生しました。小学5年生であった私は新聞紙上で初めて山津波(土石流)なる活字を知り、治山・治水の重要性と「砂防」なる用語を祖父から教わりました。大学進学を前に、迷わず林学科を受験、ここ三翠(木のみどり、海のみどり、空のみどり)学園で学びました。2年生、3年生と学んでいくうちに「砂防工学」から、より興味は「林業工学(森林利用学)」に移り、現在に至っています。

  当学科のルーツとも言える旧学科・講座は三重高等農林学校、国立一期校であった三重大学農学部以来の伝統もあり、かつ幾多の優秀な人材を社会に送り出してきた実績のある教育機関であることを念頭に入れ、今後とも教職員一同教育・研究に専心したいと考えています。学生諸君も自信を持って、勉学に励まれ、卒業時には笑顔で、ここで学んでよかったと言えるよう、悔いの無い学園生活をお過しください。


共生環境学科長 山﨑忠久

 

 

地域保全工学講座

 

 かつて,水不足の問題がほぼ解決して,公害問題に社会的問題に推移してきた頃には,人体に直接的に関わることが環境問題として大切でした.そして,そこでは私たちの求める答えが明瞭でした.要するに,きれいな空気ときれいな水が欲しかったのです.そして,化学的指標や物理的指標が登場し,私たちの暮らしを守るものさしとして大いに役立ちました.ここで理想的な水といえば,蒸留水のように全く不純物のない水のことでした.

  しかし,環境問題は公害問題と少し異なります.環境問題は個人の立場や考え方によって,求める答えが異なる場合があるからです.共生環境という用語は,人と動植物とが共生できることを良しとする立場で用いる言葉です.いくら水がきれいでも,メダカにとっては,エサもない蒸留水は良い環境ではありません.このように,実は目標をどのように設定すれば良いのかすら容易でないことを共生環境学は指摘しています.
したがって,私たちはとても新しくて多くのアイデアを要求される学科に集ったことになります.著者らは地域保全工学講座の中にあって,田園に散在する水の流れや池の様子,水田や畑にある土や,そこに生きる動植物の様子を見ながら,こういった共生環境の問題に関わっています.農地の目的は安全でおいしい野菜やお米を産みだすことです.そのためには,そこに人が住めなくてはなりません.こういった所での人と自然との共生環境が最初に大切なことだと私たちは思っています.

  最近には,田んぼに来ても,昆虫だけを探して稲穂の育っている様子を全く見ない人も少なくありません.これは流行に乗った都会的なセンスですが共生環境学のめざすところではありません.水田は昆虫を育てるためだけのものではないからです.お米を育てる場所で,虫も人も安心して暮らせる.人にも動植物にも両方に配慮できる,そういったバランス感覚を私たちは求めています.ほんとうに自分たちの環境をまじめにとらえることのできる人たちの参加を私たちは待っています.

  もしあなたが受験生であれば,入学前にはあまり入試の科目にこだわらず,幅広い知識を得ておいてください.なぜなら,そうでなければ,いずれ仕事の場で要求される計画・立案といったことができませんし,そもそも社会のニーズを把握できないからです.ただし,在学中に身に付けておかねば,卒業後に独学で習得しにくい学問分野もあるのは事実です.そういったことに配慮しつつ,卒業する時には,皆さんを地域保全工学のスペシャリストとして,社会に送り出せるように,私どもは働いています.


 地域保全工学講座主任 教授 加治佐 隆光 

 

環境情報システム工学講座

拝啓 みなさまにおかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 当環境情報システム工学講座は、平成12年、共生環境学科発足とともに設置されました。共生環境学は人、植物、動物が関わる環境に関するいまだ未知の世界について、その学問的体系を構築しながら教育研究を行うことを目的としていますが、その中でも、当環境情報システム工学講座においては植物、動物など生物の生理生態を基礎として、機械、情報、システム工学を融合させ、新しい共生環境学の構築に貢献することを目的としています。

 大学における一連の学部教育のなかで、学生のみなさんは、広い範囲の教養知識に加えて、将来役立つようなある分野の専門的知識や新しいシステムを創造する力を身に付け、さらに、先端的研究にも教員とともに参加し、その成果を社会に発表するまでを、行う必要があります。当講座では、エネルギー、生物生産に関わる装置や機器、人間を支援するシステム、装置の信頼性などをキーワードに、専門教育と先端的かつ地道な教育研究に取り組んでおります。

卒業生は、多くの民間企業、官公庁で大学にて得た専門知識を活かして活躍しており、また、さらなる研究スキルを身につけたい方には、大学院修士課程、博士課程もあります。また、短期大学・高等専門学校などからの3年次編入学や、他大学、高等専門学校専攻科および社会人の大学院入学、官公庁、民間企業様からの共同研究制度などを整え、社会情勢に柔軟に対応することを心がけています。

 みなさまと共に共生環境学・環境情報システム工学を創り、社会に貢献したいと考えておりますのでよろしくご支援をお願いいたします。


敬具

環境情報システム工学講座主任 教授 村上 克介 

 

森林資源環境学講座



今、森林が面白い 

 森林は地球環境の維持に大きな役割を果たすと同時に,再生可能な資源として,人間の生活に必要な資材を提供しています。さらに、国土保全・水源涵養・気象条件の緩和などの環境調節ばかりでなく,森林が形成する緑地空間や、木材を豊富に使った建物が人間に精神的なやすらぎを与えるなど,森林は私たちの生活に物心両面で貢献しています。

  ところで、世界的に見ると森林面積は陸地面積の約30%ですが、日本は国土の約2/3が森林で、大変森林資源に恵まれた国です。テレビのニュースの映像を見てると、樹木がほとんど見られない国が多いことに気がつくでしょう。三重大学の森林資源環境学講座では、この恵まれた資源を末永く保護し、かつ有効に利用していくために、数学、物理、化学、生物といった基礎科学の知識とともに、社会学や経済学などの社会科学、あるいは土木、建築、応用化学などの工学の知識も総動員して研究を行っています。

  森林資源環境学講座はとても間口の広い、寛容性のある講座ですから、入学後じっくり自分の適性にあった研究室を選択することができます。研究室分属後は、それぞれの専門教育が充実していますので、将来の職業に対する展望が開けてきます。

  森林は地球環境や人間の健康な生活と密接な関連がありますから、将来さらに森林資源環境学講座の重要性が増していくと考えています。
次のようなことに興味のある人、ぜひ森林資源環境学講座の各研究室を訪れて、実際に研究室の雰囲気を肌で感じてください。


  1)フィールドでの樹木や植物の生態の観察や、植物の生理作用に興味がある。

  2)森林を単に自然としてだけ見るのではなく、人間生活と関連づけて研究したい。

  3)森林と災害の関係や、水の地球規模の循環を研究したい。

  4)木質資源や環境資源としての森林を人間のために利用するシステムを研究したい。

  5)自然環境を乱すことの少ない材料である木材を豊富に使った建築に興味がある。

  6)化学成分の宝庫である木質資源を、化学的に有効利用する研究をしたい。

  7)物理系、化学系、生物系、社会系いずれにするか迷っている。

森林資源環境学講座主任 教授 徳田 迪夫 

 

自然環境システム学講座


  新入生の皆様,ご入学おめでとうございます.
 また,本ウェブサイトを訪れてくださった方,ありがとうございます.

 自然環境システム学講座では,我々の社会の持続的発展と環境保全を両立するために,理学,農学,工学など,さまざまなScience を駆使し,相性の良い「社会システム」と「(自然)環境システム」を如何に作るかということを考えています.

 自然環境システム学講座では,気候・気象学,海洋学や水文水理学,それに緑環境計画学(林学),景観設計学,その他さまざまな分野における教育・研究をしています.研究対象は,地球,大気,河川,海洋,森林など多岐にわたっています.手法的には,観測,実験,計算,理論,など,色々な手法を用いた研究を行っています.コンピュータによる気象予報やGISなどの先進的手法も普通に使っています.このように,研究のアプローチ,研究対象,そして研究成果がバラエティに富んでいるのは,教員が,農林系だけにとどまらず,広く,理学系(地球環境系,気象系,海洋系),工学系(水工水理系)も含んだ構成になっていることも一因となっています.もちろん,学生には,専門分野の広さを生かして,さまざまな教育研究メニューを提示しますし,気に入ったものを見つけた後には,そのテーマを深く追求することを,専門家がサポートします.


1. 我々がどういう人を望んでいるか

  端的に言うなら,自然に興味がある人なら誰でも歓迎です.入学試験に合格するだけの学力があれば,特別の知識は要りません.


2. 我々がどういう人を育てようとしているか

  自然を考える人.それがどういう考え,場合によっては思想信条になるようなものであろうと結構ですが,自分の知識を持って,自分の考えを他人に伝えられる人になって欲しいと考えています.開発派でも自然保護派でも結構です.それを他人に伝え,他人を説得できるだけの知識を持ってもらうための教育をします.


3. どういう人に我々の講座が「お勧め」か

  我々の講座では,高校生の学問分野でいうなら,いわゆる自然科学系の学問のうち,物理,地学,数学は勿論のこと,化学や生物学に関する学問を教育研究しています.それらの学問分野の勉強をさらに深く追求したい人には,それぞれの学問分野の「応用分野」(例えば気象学,確率統計解析,流体力学,大気化学などに係わる応用数学,応用物理学,応用化学など)の専門家が,最新の研究成果を用いて指導します.「地球環境学」をやりたければ,ストレートに「大気」「海洋」「水」を扱い,かつそれらの分野の専門家が揃っている,自然環境システム学講座が最適でしょう.温暖化などの気候変動を研究したい人,気象予報士になりたい人には特にお勧めです.既に何人かの気象予報士の先輩がいます.三重県内で理学部に進学したい人,自然環境システム学講座なら,理学(おもに地学,流体力学)を専攻することが可能です.コンピュータを深く勉強して,将来プログラマーなどになりたい人には,C++ や linux , Fortran を基礎から学ぶ機会があります.もちろん,全く卒業研究で,計算機を使わないという選択もできます.大学院に進学したい人(我々の講座では,大学院進学者が多く,教員も大学院進学を勧めますが,もちろん,進学するかどうかは本人が決めることです)には,3年間,もしくは6年間かけて一貫教育を行います.


 是非,一度,我々の講座に来てみてください.きっと何かが見つかります.
この文章のlong versionが ここに あります.温暖化の図もありますので,一度見にいらしてください.

自然環境システム学講座主任 教授 葛葉泰久

 

 

 

 

 

 

 

 

2004年度

 

 

新年のご挨拶 2005.1

学科を代表して


  明けましておめでとうございます。

  昨年の台風や地震の発生などをみると、最近我々を取り巻く地球の環境が大きく変化しつつあるような状況があります。 このような中で、自然環境の明確な測定と変動過程の解析、さらには 温室効果ガスなどの抑制問題などが重要な課題となっています。今後このような問題の解決に向けて多くの寄与ができるよう、みんなで協力して努力しましょう。有意義な一年となりますことを祈ります。

受験生の皆様へ
  社会が受験、受験と騒ぎ立てるご時世ですが、あなたの人生の中で、大学入学の意味、大学や学部の選択、その後の人生への大学の意味、などを一つじっくり考えてみてください。
  これについて、かって受験生であった私が過去の経験を踏まえて少しお話します。大学とは将来の仕事を決める大事な所です。仕事をどのように決めるか、については各自意見が異なりますが、一つ確実なことは「好きこそ物の上手なれ」という格言が示すように、自分が好きだ、趣味でもある、といった仕事が一番適しているということです。仕事がつらくても、好きなら楽しくやっていけます。逆に「金がもうかる」といったような理由のみでは将来に問題が生じます。
  次に大事なこととして、仕事の選択には何らかの形で社会や自然をよくする方向に働く精神が必要です。例えば、この学科では我々を取り巻く地球環境の理解とその健全な保護という重要な任務があります。高校で学ぶほとんどのことは大学で議論考察する内容の常識であり、いやいやながら暗記する単なる受験知識ではありません。どうぞ楽しく勉強され、
楽しく有意義な大学生活、そしてその後楽しい仕事が得られるような将来をじっくり考えていただければ幸いです。

在学生の皆様へ
  労いの言葉として述べさせていただいた内容と同じです。将来社会や自然をいろいろな面でよくする方向に貢献される好きな仕事に就かれることを強く期待します。その仕事を各自が探し、その楽しさや社会的な価値を認識するのが大学生活の大きな目的です。強制的にしかたなく探すのではなく、自然とそのようなことができる人物になってください。

共生環境学科長 関根義彦

 

地域保全工学講座


  明けましておめでとうございます。

  昨年は、日本でもアジア地域においても大地震や台風等の自然災害が発生し、環境の破壊や人的被害が大きく報道されましたが、本年は良い年であることを願いたいものです。

 上記のような災害時にクローズアップされるまでもなく、人間が生きていくうえで食料は欠かすことができません。 その食料を産みだすためには、水田や畑などの農地、道路や水路などの田園施設、ため池などの水源施設・・・などが必要です。これらの「農業基盤」の整備や維持なしでは食料を安定供給することはできません。また、農業基盤や河川、住居地等を災害から守ることもきわめて重要です。地域保全工学講座では、これらの施設などが自然と調和し、美しく豊かで住みやすい田園を築くための方法を研究・教育しており、田園計画学、土資源工学、水資源工学、流域保全学、環境施設工学の5教育研究分野で構成されています。

  本講座は、数多くの優秀な人材を世に送り出してきた伝統ある農業土木学科(講座)を前身としており、卒業生の就職先の特徴は、生物資源学部内でも屈指の国家を始めとする公務員(技術職)の多さである。また、卒業生のほとんどが専門教育を生かした職業に就いているのも誇りとするところです。さらに、現在、国際的な技術者教育認定として注目されているJABEEの認定(詳しくはホームページ参照)を受けるべく、講座を挙げて取り組んでおります。

  受験生の皆さんは、センター試験と本試験を目前に控え、大変忙しい日々を送っておられることと思います。苦労した後には、希望に満ちた大学生活が待っております。健康に気をつけて最後までがんばってください。4月には、鈴鹿山系(標高1000m余)と伊勢平野および伊勢湾(大学の敷地に隣接)の地域に立地する三重大学で皆さんとお目にかかれることを願っております。


 地域保全工学講座主任 教授 月岡 存

 

環境情報システム工学講座
皆さん、明けましておめでとうございます。

  昨年は地球環境の変化が顕在化してきた一年でした。これからはどのような社会・産業分野においても、環境を考慮した活動をしなければ、社会的に受け入れてもらえません。

  私ども「環境情報システム工学講座」は、「共生環境学科」にあり、自然・環境と共生しつつ社会活動を行うための技術を、情報工学、およびシステム工学を主な手法として教育・研究します。従って、環境を計測することにとどまらず、環境にやさしい社会を創生するための学問を取り扱います。

  この講座では、教育・研究の対象が限定されておりません。生物・資源や環境・エネルギーに関連することであれば、何を対象とすることも自由です。その代わり、自然や環境と共生するためにいかなるシステムを創り出すのか、その「創造力」に主眼を置いた教育・研究を行うことができます。

  皆さんは今、いろいろな学問分野を目の前にして、どの分野に進もうかと迷っておられるかもしれません。私たちの分野で、情報工学やシステム工学に根ざした「創造力」を培い、真に社会の役に立つ人になりませんか。社会、特に資源の少ない日本では、この分野の「創造力」を必要としており、皆さんの進む道はおおいに開けています。

  受験生の皆さんは、今、いろいろな科目の総仕上げに大変忙しい日々を送っておられることと思います。楽しく、有意義な大学生活を念頭に置きつつ、体に気をつけてがんばってください。4月には「共生環境学科」で皆さんとお目にかかれることを願っております。

環境情報システム工学講座主任 教授 佐藤邦夫

 

森林資源環境学講座


明けましておめでとうございます。

  当学科,当講座にアクセス頂き,ありがとうございます。受験生の皆さんには,年末・年始の行事も無かったかもしれません。ここは少し休んで,当学科,各講座のホームページをご覧いただくことも,受験という人生の重要な岐路においては有益かと思います。

  共生環境学科は,他大学に先駆けて今から5年前の2000年4月に発足いたしました。地球環境から人間の生活圏である森林環境や自然環境までとらえるユニークな学科です。

  地球上における生命は,太陽エネルギーをパワーソースとして,気体と固体とによる炭素の持続的な循環システム(光合成システム)の下で成り立っています。21世紀を迎え,自然環境を保全しつつ持続的なハイテク社会を構築するためには,石油・石炭に依存した現行の社会システムを根本的に考え直し,再生可能な生態系物質循環システムを高度に再現できる社会システムに移行させる必要があります。

  こうした社会の過渡期にあっては,森林資源の利用はまさに持続的であり,その持続的な利用は決して夢物語ではありません。日本では森林が国土面積の約66%を占めています。このような豊かな森林をもつ私たちは,適切に管理を行うことによって,何度でも再生させ利用することができます。また,私たちは自然の猛威によって多くの災害(撹乱)を受けてきましたが,森林は私たち人間にかけがえのない環境を提供してきてくれました。このような森林資源・森林環境の利用と維持は,遠い将来における地球への担保と近い将来における災害の少ない自然環境を提供してくれます。

  当森林資源環境学講座は,このような再生可能な生態系物質循環システムを実現させるために,生物生態系における森林の生態研究から始まり,森林環境とその資源の利用を主体とした災害の無い社会生活の実現の研究や,炭素を主体とする森林資源利用の物質循環系を発展・維持するために何をすれば良いかについて教育・研究する講座です。そして,受験生の皆さんが共生環境学科の森林資源環境学に進学されたときには,私たちと一緒になって森林に関する幅広い学習をしながら,自分の得意とする分野を見つけ,森林の環境的な役割と資源的な役割をもとにして,未来を切り開いていくことができるものと確信しています。

  私は昨年,砂防工学という専門の立場から,三重県宮川村の土砂災害地や新潟県山古志村の中越地震被害地などを調査してきました。災害はそれぞれの地域で異なる顔を見せていました。そのようななかで,人間社会の防災における森林の役割が無視できないことを,改めて感じて参りました。

  皆さんが当学科に入学し,当講座へ進学され、私たちと一緒に森林をもとにして安心できる安全な社会を実現していくことを,熱く期待しています。

森林資源環境学講座主任 教授 林 拙郎

 

自然環境システム学講座

 

 明けましておめでとうございます。

 共生環境学科“自然環境システム学講座”は生物資源学部の中で唯一、海の底から山を越え、遙か空までの環境を総合的に研究することができる講座です。

 5つの教育研究分野(地球環境気候学、海洋気候学、水域環境学、緑環境計画学、環境解析学)から構成される本講座は、地域レベルと地球レベル、人間的視野からと自然環境的視野から、という両方の観点から地球の環境システムにおける各サブシステム(大気、気候・海洋・陸・土壌・水域・森林)を物理的・化学的・生物的・数学的に学習し、情報の管理・解析に関する技術を身に付けることを目的としています。このように自然環境に関する基礎を学ぶことにより、現代における合理的かつ持続可能な自然資源の利用・自然環境の保全・保護に役立つ知識を得ることができます。

  “自然環境システム学講座”の教育方針は、ただ知識の習得だけではなく、応用・実践に向けた教育研究活動も積極的に取り入れています。三重大学所有の「演習林」および三重県各地においての現場調査と各種の測定器・解析器を用いた観測、また、伊勢湾および太平洋での「練習船」を用いた大気と海洋の観測、さらにはリモートセンシングデータのコンピュータ解析を行います。これらは、レベルの高い観察力・技術力を身につける上で最高のチャンスとなります。

 本講座教員は、しっかりとした知識を持った上で、自然資源の持続可能な利用、地域環境・地球環境の保全・保護に貢献できる、リーダーシップを担うことのできる人材育成を目指しています。 

 この講座で学ぶであろう皆さんは、地球を構成しているサブシステムの構造・仕組み・働きの自然科学的な理解にとどまらず、日本を始め世界各地、特に東南アジア・アフリカ・中南米における、地球環境システムと人間活動の相互作用をも深く理解・研究し、人類が今直面している様々な環境問題(大気・水・土壌汚染、温暖化、砂漠化、森林破壊、気候変動、水資源管理など)における総合的な知識・理解を深め、自然と共生できる環境に優しいライフスタイルを私達と一緒に探っていくことができます。

 自然が大好きで、自然環境の観測・調査に興味があり、その理解を深めたい、そして、環境にやさしい生き方に貢献したいという皆さんの思いを“自然環境システム学講座”で実現させましょう。皆さんが共生環境学科の新入生として入学されることを楽しみにしております。
 

自然環境システム学講座主任 教授 SANGA-NGOIE Kazadi