微生物遺伝学研究室では、下の図のように、微生物を利用しバイオマスからの有用物質生産を究極の目的にして研究をしています。バイオマスは太陽光を植物が利用して大気中の二酸化炭素を固定したものから出来ています。これを炭素源として有効利用できれば、地球温暖化を防ぐことができます。ヒトが利用できないバイオマスを微生物は分解・利用することができます。これらの微生物には、糸状菌(いわゆるカビ)と細菌が知られています。
 糸状菌はコウジカビなど産業に利用されているものも多く、長い間、研究の対象となってきました。
糸状菌は、環境に存在するエネルギー源によって遺伝子の発現を制御し、無駄な酵素を生産しないようにしています。これは大腸菌のラクトースオペロンと本質的には同じで、環境に応じて遺伝子発現を変化させ適応するという生命現象です。モデル糸状菌であるAspergillus nidulansを使って、バイオマス分解酵素の生産制御メカニズムを転写因子とその制御因子を中心として解明し、将来的にはその知見をより実用的な糸状菌へ生かすための研究をしています。(國武絵美)
 一方、細菌の中でも嫌気性細菌は、バイオマスを分解するものが知られており、微生物遺伝学研究室でも30年以上にわたり研究が続けられています。クロストリジウムといえばアセトンブタノール発酵菌を思い浮かべると思います。実は第二次世界大戦中に、細菌を使ってゼロ戦の燃料を発酵で生産しようとした歴史もあります。研究室では、
クロストリジウム属細菌のうちでもバイオマスを分解して水素ガスやアルコールを生産する菌を保有しており、これをゲノム編集などで改良する研究をしています。(木村哲哉)
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