【プレスリリース】貝が「歯」で削る海底のプラスチックごみ―マイクロプラスチックの新たな発生源―

 海の底に沈んだプラスチックごみは、いつまでもそのままの状態で残り続けるのでしょうか。海底にはこれまでに海に流れ込んだ大量のプラスチックごみが沈んでいると考えられていますが、それらが時間とともにどのように変化していくのかについては十分に理解が進んでいません。当時 博士前期課程2年の 中野碧さん(水圏資源生物学教育研究分野)、伯耆匠二准教授、山下麗博士(当時 東京大学大気海洋研究所)、河村知彦教授(当時 東京大学大気海洋研究所)らの研究グループは、海底に生息する貝類が歯(歯舌:しぜつ)を使って餌を削り取る行動に着目し、その活動が海底のプラスチックごみを削る可能性を検証するため、4種の植食性貝類を対象とした給餌実験を行いました。その結果、4種すべての貝類でプラスチック表面が削られることが確認され、削られた部分からは、数十µm以下(髪の毛の太さの約1/10以下)の「極微小マイクロプラスチック」が発生することが明らかになりました。さらに、これらの貝類の中でも、硬く尖った歯を持つ種は、プラスチック表面を削り取る能力が特に高いことを明らかにしました。

 本研究の成果は、波や風のような物理的作用が比較的少ない海底環境においても、貝類の摂餌行動という生物的作用によって海底のプラスチックごみが徐々に削られ、マイクロプラスチックが発生する可能性を新たに示したものであり、海底プラスチックごみのリスク評価や効果的な対策の立案に貢献しうる新たな視点を提供するものです。

  • 貝類はおろし金のような歯(歯舌:しぜつ)で餌を削り取って食べることが知られている
  • 貝類が餌を食べるときの動きによってプラスチックの表面が削られることを確認
  • プラスチックの損傷部分から数十 µm 以下の極微小マイクロプラスチックが発生することを確認
  • 硬く尖った歯を持つ貝類はプラスチックを削り取る能力が高いことを確認
  • 海底のプラスチックごみがマイクロプラスチックの新たな発生源になっている可能性を提示

詳しくは下記サイトをご覧ください。

詳細(プレスリリース本文)
https://www.mie-u.ac.jp/news/topics/bc12c12fcc3b4e9c924adbcb0130ccc6.pdf

東京大学 大気海洋研究所 プレスリリース
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2026/20260513-1.html



掲載誌:Marine Pollution Bulletin
掲載日:2026 年 3 月 25 日
論文タイトル:
Radular morphology, elemental composition, and mechanical properties determine the plastic-eroding ability of molluscan grazers
著者:
by Aoi Nakano, Shouji Houki*, Rei Yamashita, Tomohiko Kawamura
*責任著者
URL:
https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2026.119619


本研究科の論文情報に関する記事アーカイブ 水圏資源生物学研究室
パンフレット