日比野友亮博士(研究当時本研究科在籍)が新種のナマズを発見しました!

三重大学生物資源学研究科に在籍し,研究を行っていた日比野友亮博士(現:北九州市立自然史・歴史博物館学芸員)が,滋賀県立琵琶湖博物館の田畑諒一学芸技師とともに,三重大学在籍時の研究成果として,日本で4種目となるナマズ属の新種Silurus tomodai(標準和名:タニガワナマズ)を国際学術誌Zootaxaにおいて発表しました。


〔写真〕タニガワナマズ Silurus tomodai (日比野友亮博士提供)

日本産のナマズ科ナマズ属魚類は,琵琶湖・淀川水系固有のビワコオオナマズ(Silurus biwaensis)とイワトコナマズ(S. lithophilus)をのぞけば,従来ナマズ(S. asotus)1種しかいないと考えられていました。
日比野博士らは,未知の遺伝的特徴を持つナマズ属魚類が三重県を中心として確認された先行研究に着目し,新たに標本採集を行うとともに,三重大学生物資源学研究科附帯施設・水産実験所をはじめ,各地の博物館等に所蔵されているナマズ属の標本を詳細に調べた結果,既知種との形態的な違いが明らかになったことから上記の未知のナマズをSilurus tomodai(標準和名:タニガワナマズ)として記載,発表しました。
種(学名)を担保するホロタイプと呼ばれる唯一無二の標本は,三重県櫛田川水系産で,三重大学水産実験所の所蔵標本として登録・保管されています。
新たに採集された標本以外にも,以前より日常的に収集されてきた三重大学水産実験所所蔵の標本群の中にもタニガワナマズの標本が含まれていました。
これらの標本は当該研究に利用され,県内での分布や生息環境の把握に大きく貢献しました。
現在,この新種は三重県を始め愛知,岐阜,長野,静岡の各県からも確認されています。

本種は,一般的なナマズの生息環境とは異なり,河川上・中流域(谷川)に主に生息することからタニガワナマズと名付けられました。
系統的にはナマズよりもイワトコナマズに近縁ですが,体形的にはむしろナマズに近く,これまでナマズと同一視されてきたと考えられます。
日本産のナマズ属の新種発見は,1961年のビワコオオナマズおよびイワトコナマズ以来57年ぶりです。
ナマズは我々日本人に非常になじみの深い淡水魚ですが,そのような身近な魚から新種が発見されたことは,大きな衝撃と言えるでしょう。
タニガワナマズの生態や絶滅危惧の程度についてはほとんど不明であり,今後の研究が期待されます。


Hibino, Y. and R. Tabata (2018) Description of a new catfish, Silurus tomodai (Siluriformes: Siluridae) from central Japan. Zootaxa 4459 (3): 507-524, DOI: https://doi.org/10.11646/zootaxa.4459.3.5



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