前身の三重高等農林学校から創設101年目にあたる12月10日(土) に第11回 生物資源学研究科オープンラボを開催致しました。対面式での開催は3年ぶりとなりました。
この企画は、日頃、教員と大学院生・学部学生が研究室で行っている研究の成果を、農林水産・食品・バイオ・環境関連の企業や公的機関の方々にアピールし、生物資源学研究科に対する理解を深めてもらうことを目的としています。今回は、官公庁や企業などから64名の方にご参加いただき「地球温暖化と気候変動に対応する生物資源学研究」をテーマに、安成哲三氏(総合地球環境学研究所 顧問・名誉教授、京都気候変動適応センター長)によるご基調講演、学生と教員によるシンポジウム、パネルディスカッションを実施しました。
松村直人 研究科長による、開会挨拶から始まりました。前身の三重高等農林学校から創設101周年を迎え、「ミクロな遺伝子から地球レベルの環境まで」幅広い分野をカバーする、他大学にはない独自性豊かな当学部・研究科の魅力を紹介しました。
基調講演
安成哲三氏(総合地球環境学研究所 顧問・名誉教授、京都気候変動適応センター長) より「地球気候変動における生物圏の役割」をご講演いただきました。私たちの住む地球に対する考え方とそれに伴う社会の変革が必要である、今後の地球のために人類全体で問題意識の共有が大事であることをお話されたことが印象に残りました。
安成哲三氏ご講演「地球気候変動における生物圏の役割」
シンポジウム
シンポジウムでは、教員と学生による「地球温暖化と気候変動への対応」に関連した研究成果や活動を紹介しました。
1. 国際資源植物学研究室 教授 関谷 信人、資源循環学専攻博士前期課程1年 前 采花
『コメと温暖化:標高を活用した実証的分析から将来のコメ生産を考える』
コメ生産体系の構造転換に重要な、地力活用の技術開発と温暖化による地力変化の予測について、青山高原の水田を対象に、標高による気温差と地力の関係を調査する最新研究の紹介をしました。
2. 森林環境砂防学研究室 教授 堤 大三、資源循環学科4年 万田 純菜
『地球温暖化の土砂災害への影響 -氷河湖決壊洪水・流木災害-』
ヒマラヤ地域で発生する氷河湖決壊洪水について取り上げ、気温上昇の影響について現地調査と数値シミュレーションによって行った検討、土砂災害と共に顕在化している流木災害に対する取り組みについて紹介しました。
3. 附帯施設水産実験所 教授 松田 浩一、 生物圏生命科学専攻博士前期課程2年 木藤 裕也
『大きく変化する海洋環境と漁業生産』
三重県が面する伊勢湾と熊野灘では、イカナゴ、マアナゴやアサリが大きく減り、志摩半島では藻場の衰退が著しく、かつてない異変が進行しています。要因は明らかになっていませんが、地球温暖化等に伴う沿岸水温の上昇と、栄養塩濃度の低下とあわせながら、海洋環境の変化について紹介しました。
パネルディスカッションでは、 橋本篤 副研究科長(研究担当)をモデレーターに、パネリスト5名が登壇し、気候変動に起因する災害とその適応、気候変動に対応した持続的な食糧生産、気候変動に対応する異分野融合をテーマに討論しました。研究者だけが知る情報にとどまらず、その情報を人類全体に発信することが、今後の地球を守ることに必要、そのためには、小さなコミュニティから地道な普及啓発をすすめていかなければならない、と議論が白熱しました。
安成 哲三 氏(総合地球環境学研究所 顧問・名誉教授 京都気候変動適応センター長)、
教授 関谷 直人、教授 堤 大三、 モデレーター:副研究科長(研究担当) 橋本 篤
学外の参加者からは、下記のようなお声をいただきました。
日本周辺海域で水産業、漁業の生産量の減少が大きな課題となっている今、気候変動対策が課題解決につながるということを国民世論の動きにしていかないということをご講演を通じて感じました。
学外の参加者の声
地域の課題についても大学の先生方と取り組ませていただいており、今後も協力をお願いしたい。
学外の参加者の声
今日ご講演いただいたテーマは、人類そのものの存続にかかわるテーマであり、草の根的に現状何が起こっているかということを知る機会を広めていきたい。
学外の参加者の声
最後に、神原淳 副研究科長(教育担当)より、閉会の挨拶がありました。日々の雨雲情報は、スマホを見ると簡単に手にすることができる、しかし、交通などに関わってくる一時的な情報のまま終わるのでなく、日ごろより気象に興味を持つことを大事にしたいと話しました。