ポイント
- 青森県陸奥湾に生息するテッポウエビが発する「パチパチパチ」と聞こえるパルス音は、 その頻度だけでなく音響特性も時空間的に変化することを明らかにした。
- テッポウエビのパルス音は海中音の主要な構成要素である上に、その頻度や音響特性は海 洋酸性化や人為雑音の影響を受けることが分かっている。本研究で得られた結果は、本海 域における環境影響評価を行う上で重要な基礎的知見となる。
本研究科の森阪匡通教授が参画している研究グループ(筆頭研究者:三島由夏・東京海洋大学助教)は、青森県陸奥湾に生息するテッポウエビが出すパルス音の時空間変動を調べました。

参考図 テッポウエビのパルス音。上の図は音の波形を表しており、下の図は音響スペクトロ
グラム画像に変換したもの。色は音の大きさを示しており、青色は音が小さく、黄色は音
が大きい。縦線として見えている多数の音がテッポウエビのパルス音である。
テッポウエビは「パチッ」というパルス状の大きな音を生成します。この1個体が出すパルス音がたくさん集まると海の中で「パチパチパチ」と聞こえます。こうした海中音は海域によって異なり、また環境の変化によって変わることが分かっています。したがって、環境変動をモニタリングするためには、各海域での現段階のベースラインを知る必要があります。そこで本研究グループは、陸奥湾でテッポウエビのパルス音の頻度や音響特性について調べました。
その結果、パルス音の頻度は日没頃増加し、夜間に多く、日の出付近で減少する日周変動がありました。パルス音の頻度と水温には正の相関がありました。水深の深い観測点の方がパルス音の頻度は高くなり、ホタテ養殖施設の内側の方が外側よりも高くなりました。また、各パルスの受波音圧の頻度分布も、夜間や温かくなるにつれて高い方へシフトする傾向が見られました。一方で、同じ時期・時間帯では、大きな空間変動は見られませんでした。ピーク周波数は、夜間には主に 6-10 kHz に分布していましたが、昼間は年によって変動がありました。また、水深の浅い観測点では 8-10 kHz が優占し、水深の深い観測点では 11-13 kHz が優占する傾向が見られ、中間の水深(35-40 m)ではこれら両方に同程度のピークが見られました。このようにパルス音の頻度だけでなく音響特性も時空間的に変化することがわかりました。
今の段階ではその変動要因についてはわかりませんが、今後さまざまな角度から研究を行いたいと考えています。陸奥湾は海洋酸性化の進行が懸念されているだけでなく、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」に基づいて「準備区域」として整理されており、今後洋上風力発電所の建設などに伴う人為雑音が生じる可能性があります。今後も継続的に録音を行い、パルス音の頻度や音響特性を調査することで、環境変化や人為雑音の影響をモニタリングすることができると考えています。
本研究成果は、2026年5月18日に「The Journal of the Acoustical Society of America」に掲載されました。
詳しくは下記サイトをご覧ください。
三重大学 プレスリリース
https://www.mie-u.ac.jp/news/topics/2026/06/post-4145.html
詳細(プレスリリース本文)![]()
https://www.mie-u.ac.jp/news/topics/a3c5d893cd7422c9a386ff909b610be0.pdf
掲載日:2026 年 5 月 18 日
論文タイトル:
Spatiotemporal variation of pulse abundance, sound pressure level, and frequency in Mutsu Bay: Implications for snapping shrimp activity and distribution
(陸奥湾におけるパルス音の頻度、音圧、周波数の時空間変動:テッポウエビの活動と分布に関する考察)
著者:
三島由夏 1、五十嵐健志 2、3、森阪匡通 4
1. 東京海洋大学 海洋資源エネルギー学部門
2. Mutsu Bay Dolphin Research
3. 一般財団法人山形県理化学分析センター
4. 三重大学 大学院生物資源学研究科
URL:
https://doi.org/10.1121/10.0043882