【脂肪細胞ができるメカニズムの一端が明らかに】山本朝陽さん,早川琢也さんらの研究成果が英国の科学誌Journal of Cell Scienceに掲載されました!

 この度,生物資源学研究科・分子細胞生物学教育研究分野の山本朝陽さん(博士前期課程1年),早川琢也さん(2021年度博士後期課程修了)らが,脂肪細胞のできる際に起こる細胞内のゲノムDNAの変化を明らかにしました。
 肥満は,メタボリックシンドロームの主な原因の1つとして,近年世界的に深刻な問題とされています。肥満の主な原因として,エネルギー摂取と消費のアンバランスが挙げられます。同時に生体内では脂肪細胞の増加や肥大化が生じています。前駆脂肪細胞が増殖・分化することにより脂肪細胞ができるため,肥満予防研究のモデルとしてマウス胎仔由来の前駆脂肪細胞3T3-L1が広く用いられています。この細胞にホルモン刺激を加えて分化誘導を行うとMitotic Clonal Expansion (MCE) と呼ばれる1- 2回の特殊な細胞増殖サイクルを経て成熟した脂肪細胞へ分化することが知られていました(図上)。しかしながら,このMCEの間にどのような変化が細胞に起こっているのかについては,これまで詳しいことは分かっていませんでした。

 今回研究チームは,高速塩基配列解読装置(次世代シーケンサー)を用い,倍加反応(DNA複製)がMCE中の細胞のゲノムDNA上でどのような順序で進むのかについて詳しく調べました。その結果,MCE中の細胞では,脂肪蓄積などに関わる複数の遺伝子が通常より早いタイミングで倍加していることが分かりました。興味深いことに,このタイミング変化は1回目のMCEサイクルでは起こらず,2回目のサイクルで初めて起こっていました。この結果から,脂肪細胞になる前の細胞が何回のMCEサイクルを経るかが,その後の脂肪細胞の機能に影響することが予想されました。実際に2回のMCEサイクルを経た細胞は,1回だけMCEサイクルを経た細胞や1回も経なかった細胞に比べ,顕著に脂肪を細胞内に蓄積していることが実験で観察されました(図右下)。今回得られた知見は,肥満治療薬の開発などにとって有用な情報となることが期待されます。


 この研究は,文部科学省・新学術領域研究,「非ゲノム複製の破綻がもたらすDNA損傷メカニズムの解明」(研究代表者:竹林慎一郎)およびJST CREST 「潜在的不安定性から読み解くゲノム設計原理」の支援を受け行われました。本研究内容は,英国の科学雑誌「Journal of Cell Science」に掲載されました。

Takuya Hayakawa*, Asahi Yamamoto* (*同等貢献の著者), Taiki Yoneda, Sakino Hori, Nanami Okochi, Kazuhiro Kagotani, Katsuzumi Okumura, and Shin-ichiro Takebayashi
Reorganization of the DNA replication landscape during adipogenesis is closely linked with adipogenic gene expression
Journal of Cell Science


詳しくは下記のサイトをご覧ください。(三重大学外部のホームページです。)
➡ https://journals.biologists.com/jcs/article-abstract・・・

分子細胞生物学 研究室
➡ https://www.bio.mie-u.ac.jp/academics/master-15/dep03/course07/lab41/




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