勢水丸で採集された新種のイソギンチャクが 「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10」に選出!

本研究科の木村妙子教授(生物圏生命科学専攻 海洋生物学講座 海洋生態学研究室)が、一員となっている研究グループが、本研究科 附属練習船 勢水丸の研究航海において採集し、2022年に新種として発表したヒメキンカライソギンチャク Stylobate calcifer が、3月19日に、国際的な海洋生物のデータベースであるWoRMSから「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10(2022年)」(Ten remarkable new marine species from 2022)に選出されました。
ヒメキンカライソギンチャクは、三重県熊野灘沖の深海に生息しています。ヤドカリの棲む巻貝の上に付着し、宿主の成長に合わせてその殻を"増築していく"という極めて珍しい生態を持ちます。いわば"ヤドカリの城"を司るその姿になぞらえて、本種はイギリスの小説「魔法使いハウルと火の悪魔」(映画「ハウルの動く城」の原作)より、火の悪魔であるカルシファーの名前が学名として命名されました。この研究発表の中心となった吉川晟弘さんは、三重大学生物資源学部の平成27年度卒業生です。



ヒメキンカライソギンチャク Stylobate calcifer

本研究科 附属練習船 「勢水丸」

 研究グループ(連名順) 


吉川 晟弘 (よしかわ あきひろ)
東京大学 大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センター 特任研究員

泉 貴人 (いずみ たかと)
研究当時:琉球大学 理学部海洋自然科学科生物系 日本学術振興会特別研究員PD
現:福山大学生命工学部 海洋自然科学科 講師

森滝 丈也(もりたき たけや)
鳥羽水族館 飼育研究部 学芸員

木村 妙子(きむら たえこ)
三重大学 大学院生物資源学研究科 教授

柳 研介(やなぎ けんすけ)
千葉県立中央博物館 分館海の博物館 主任上席研究員

 選出団体 


World Register of Marine Species (WoRMS*)( https://www.marinespecies.org/ )
*WoRMSとは、海洋生物種の学名と分類学的情報に関するデータベースを構築する大規模な国際プロジェクトであり、世界各地の研究機関のに所属する600人以上の研究者が「編集者」となり、それぞれが専門とする海洋生物種に関する情報の登録を行っています。WoRMSでは毎年、前年に発表されたすべての海洋生物の新種から「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10」(Ten remarkable new marine species)を選出し、「分類学者に感謝する日」とされている3月19日に発表しています。

 「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10(2022年)」掲載ページ

 2023年3月22日掲載プレスリリース 

「ヤドカリの"宿"を作るイソギンチャク「ヒメキンカライソギンチャク」が世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10(2022年)に選ばれました」

  https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/aori_news/information/2023/20230319.html

 2022年4月26日掲載プレスリリース 

「ヤドカリの"宿"を作る新種のイソギンチャク!? ―深海の驚くべき共生関係」

  https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2022/20220426.html

  生物資源学部ホームページでの研究紹介

 発表論文 

雑誌名:「Biological Bulletin」(2022年4月25日付)
論文タイトル: Carcinoecium-forming sea anemone Stylobates calcifer sp. nov. (Cnidaria, Actiniaria, Actiniidae) from the Japanese deep-sea floor: a taxonomical description with its ecological observations
著者:Akihiro Yoshikawa*, Takato Izumi*, Takeya Moritaki, Taeko Kimura, Kensuke Yanagi
DOI番号:https://doi.org/10.1086/719160

パンフレット