農場水田における有機農業への転換を目指して


FS農場実習における田植え
令和5年度より附帯施設農場内のほぼ全ての水田へ投与する元肥を牛糞堆肥に転換しました。
そして、お米の収穫量と味の変化を農場実習にて評価いたしました。

農林水産省が令和4年に策定した「みどりの食料システム戦略」にて、耕地面積に占める有機農業の取り組み面積を令和32年までに25%に拡大することを目標に掲げており、これを受けて附帯施設農場でも有機農業の取り組みを開始しました。
有機農業とは
「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう」と有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)にて定義されています。

化学的に合成されていない肥料及び農薬の効能は即効性に劣り、それ伴う作業量の増加や収穫量の減少が有機農業の実践上の問題となってます(有機農業をめぐる事情(農林水産省))。

附帯施設農場では、無理のない変換を図るため、まずは実践が容易だった元肥の変換から着手し、場内水田のほぼ全ての元肥を化成肥料から農場産および近隣の畜産組合さんより安価でご提供いただいた牛糞堆肥に変換しました。これにより水田における化成肥料の使用量がほぼ半減しました。

心配された収穫量とお米の味について、資源循環学科農業生物学教育コースのFS農場実習にて評価したところ、本年度に関しては 収穫量の低下は比較的小さかったこと、お米の味は化成肥料を慣行量投与したお米よりも向上していたこと を確認しました。お米の味は、食味計による食味値ではなく炊飯器で炊いたご飯の食べ比べより評価しており、詳細は下図の脚注をご覧ください。


FS農場実習にて実施した収穫量とお米の食味評価の結果


堆肥を継続的に使用すると追肥の必要性も徐々に低下すると言われており、少なくとも化成肥料の削減とお米の品質の向上を目指して今後もこの取り組みを継続する予定です。

なお、本取組は、令和4年度JAグループ三重「地域課題の解決を実践する学⽣の教育研究活動に対する経費⽀援」としても実施いたしました。

文責:長菅輝義教授 (附属紀伊・黒潮生命地域フィールドサイエンスセンター 附帯施設農場


令和6年用の牛糞堆肥の投与

附帯施設農場
➡ https://www.bio.mie-u.ac.jp/academics/facilities/fsc/farm/


パンフレット