農業土木学講座

当講座では,農業を営む場である農村地域を保全し,健全な物質循環の場としての豊かな農村環境を創出することを目標とした教育・研究を行っている。具体的には,自然の営みと人間が直接かかわる農村における水・土・空間の持続的で適正な利用,農村環境に関する計画・保全,農地・農用施設の整備・維持管理,地域資源の有効利用,自然災害に対する防災・減災,復旧に必要な理論と技術,地表流・地中流に関する調査と解析,農地における物質移動現象の解明と予測についての教育・研究を行う。

農業土木学講座の教育研究分野

農村計画学

今日,感性豊かな若い人々の多くが,農山村への関心を深め各地で個性豊かな暮らし(生業)を展開している。われわれはこれを「田園回帰」と呼んでいる。一方,農山村地域での人間活動の衰退は,農業・農村の多面的機能(土砂流出の緩和機能や地下水の貯留機能など)の低下を引き起こすと考えられている。当分野は,農山村地域での暮らしや生業を維持していくための方策を日々考究する。例えば,農業生産活動の維持,暮らしをしていくために必要な食料の確保,エネルギーの自給システムの構築である。これらをテーマに,水,農地,エネルギーの視点にたった地域計画ならびに社会技術の教育研究を行う。

土資源工学

多方面で役立つ土資源(地盤)は,時には大きな災害を引き起こすことがある。この地盤災害から地域や人々を守るため,様々な条件下で特性が異なる土の物理的・力学的特性,並びに構造物との相互作用で発揮される諸特性を明らかにし,土資源の安全かつ適切な利用のための教育研究を行う。具体的には,SAAMシステムを用いたグラウンドアンカー工の維持管理に関する研究,砕石を用いた地盤改良機(エコジオ工法)による地盤支持力,液状化・排水対策に関する研究,豪雨・地震時に発生する地盤災害の発生機構の解明とその対策に関する研究,老朽ため池の維持管理に関する研究,地盤のせん断破壊の機構解明に関する研究などを主なテーマとしている。

水資源工学

農業分野を中心とした自然界の水循環過程における降雨や蒸発散といった水文量の量的把握を背景に,持続的で社会的ニーズにかなった水資源の保全と再利用技術の構築をめざしている。具体的には,富栄養化などの水質を重視した貯水施設・送配水施設の設計に関する提案,水環境における生態系に配慮した調査と環境改善の提案,農村における流域治水への寄与に係る計測技術や施設設計の提案 などを行い,それらの調査結果について評価方法自体も含めたことを教育研究する。

農地工学

農地土壌の工学的管理技術の開発,劣化土壌の改善,国際技術協力などに関する教育・研究を行う。とくに,農業農村における諸問題と,その対策としての農業土木技術,土地利用計画,農業農村整備,農地保全等について教育・研究を行う。

水利施設工学

近年では,ダム・頭首工・水路といった農業土木施設は,激化する自然災害や老朽化のなかで様々な 問題が生じている・また,情報化技術の急速な進歩に対して,農業土木施設の高度な維持管理法も模索されている。 これらの問題に対応するため,農業土木施設の施工・維持管理において施設の安全性, 維持管理の検査手法や適切な更新法などを研究対象として,材料試験・模型実験・調査・ 数値解析などの技術を用いた教育研究を行う。

国際環境保全学

国内外の農地施設と農業用排水施設における様々な環境問題に対する持続的手法による解決と農業構造物の保全を目標とする。具体的には,農業構造物に重要な「土」,「地盤」,「材料」,「水」の土木学的および工学的な解析手法に基づく地域環境保全に関する教育研究を行う。 例えば,土砂災害の防災を目的としたのり面侵食メカニズム解析や地滑り対策法の開発,現地のリサイクル材有効利用による道路・河川堤防崩壊対策,安価で使いやすい資材を用いた地盤改良と水利施設のデザイン,野立てソーラーシステムの支柱基礎の開発など行う。また,地域資源管理の最適条件を導くために,有限要素法を用いた数値解析を行う。

土壌圏システム学

土壌圏は数多くの動植物の生産・活動の場であり,土壌圏と水圏,気圏,生態圏との間の水・エネルギー・物質の循環システムは気候形成や植生の状態を強く支配している。特に,凍土地帯の循環システムは温暖化にともなう寒冷地の農業利用や気候変動へのフィードバックの見地からも重要である。土壌圏におけるこれらの循環の実際をとらえ,今後の変化を予測し,健全な循環システムの持続を目指す教育研究を行う。

土壌圏循環学

土壌・植生・大気で構成される土壌圏では,水分,化学物質,熱,ガスの流れが生じている。 この土壌圏中の物質移動のメカニズムを明らかにし,移動予測モデルの構築を目指した教育研究を行う。 土壌に投入された有機物は,分解されて無機化され,二酸化炭素は光合成により, また窒素成分は再び植物に取り込まれる。この土壌圏における窒素・炭素循環に対して, 土壌中の水分移動,植物による吸水,栄養成分の吸収に注目したモニタリング実験と数値 シミュレーションにより現象を解明する。また,土壌中の化学物質移動の研究を応用し, より精度の高い土壌中のセシウムや汚染物質の移動予測を目指す。

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