農業生物学講座

人類にとって農業,すなわち食料生産の営みは必要不可欠である。また,安全でおいしい農産物の供給・環境の保護・生物資源の循環においても農業が重要な役割を担っていることは言うまでもない。 この活動をより持続的により良くしていくためには,対象とする動植物の生命現象を明らかにし,深く理解することが必要である。我々の講座では,遺伝育種学,作物学,園芸学,動物生産学,飼料学, 植物医科学,昆虫生態学といった農学の考え方を出発点として,そこから新たに発展した生物科学を様々な視点から追求し,世界的な食糧問題の解決や緑豊かな環境の維持に役立てることを目的としている。




農業生物学講座の教育研究分野

分子遺伝育種学

育種とは,人間にとって望ましい方向へ生物の遺伝的性質を改変する技術であり,品種改良と言い換えることもできる。私たちの研究室では,植物の育種にとって重要な生殖機構(受粉・受精,自家不和合性,花器官形成など)の研究を中心に,遺伝子・ゲノムレベルでの研究を行っている。また,植物への遺伝子導入技術を用いて,育種に有用な遺伝子の機能解明や遺伝子組換え植物の作出を進めている。

資源作物学

人間は衣・食・住を基礎とした人間らしい生活を実現するために必要な資源を農林水産業により持続的に生産している。そのうち,食糧となる食用作物や工業原料となる工芸作物などの資源作物について,それぞれの特性を明らかにし,有効な栽培・利用方法をみいだそうとする学問が資源作物学である。三重県特産品のイセイモ,ダイズ,水稲などの新品種育成や環境保全型農業生産技術の開発を通して地域の農業に貢献している。

園芸植物機能学

園芸植物がもつ様々な機能を,果樹や野菜の栽培の改善に役立てるための研究を行っている。果樹では,常緑果樹の果実の発育・成熟に関する生理学的研究を行い,野菜では,環境ストレスに対する生理・生化学的反応の解明とこれらに基づいた高品質野菜の栽培法の確立を目指している。

動物生産学

ウシ・ブタ・ニワトリの作る肉・牛乳・卵を食べることで,人は良質のたんぱく質を摂ることができ,健康の維持ができる。私たちの研究室では「動物のホルモン分泌」や「工サの消化に重要な 微生物」について調べることで,動物の生産性を高めるための基礎的な研究を行っている。動物の生産性を高めることができれば,より少ない工サで動物を飼うことができ,環境に対する負荷も減少するので,食料問題や環境問題の解決につながる。

草地・飼料生産学

草地で生産される飼料作物や食品製造で発生する副産物などの飼料資源を対象に,発酵飼料(サイレージ)としての貯蔵特性や反芻家畜における栄養成分の利用性について調査・研究を行う。

植物医科学

植物の病気を防ぐためにはその病気を正しく診断し,病原菌の種類や生態を正確に理解することが必要である。私たちの研究室は,将来,植物の医者として植物病害の診断,防除指導ができる人材を育てることを目標に教育を行っている。研究面では,植物病害の原因となる微生物(主に菌類)の分類,多様性,系統,進化,生態について,顕微鏡を用いた形態学的方法,遺伝子解析などの分子生物学的方法を駆使して研究を行っている。

昆虫生態学

昆虫は農業を始めとする様々な産業の害虫として重大な損失を与えうるが,一方で花粉媒介や害虫防除などのために極めて重要な役割を果たしてもいる。本研究室では,害虫の防除,有用昆虫の利用,昆虫群集の保全のための知識を主に生態学的に深めることを目標としている。研究テーマは多岐にわたるが,基礎的な側面からのアプローチが多い。現在研究しているテーマとしては,ミツバチ以外の野生昆虫による農作物の花粉媒介の実体と仕組みの解明,植食性昆虫の寄主範囲の進化が生じる仕組みの侵入昆虫を利用しての解明などがある。

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