海洋生物学講座

海洋,河川,湖沼等をフィールドとして,生態系および生物多様性の保全,ならびに新たな増養殖技術の開発やICTを活用した スマート水産業に関する教育・研究を通じて、水生生物の生物資源としての持続的かつ効率的な有効利用と管理に資する人材の育成を目指す。そのために,プランクトン,藻類,甲殻類,貝類,魚類,海生哺乳類など,水圏生態系を構成する多種多様な分類群を対象として,それらの生物としての営みを,遺伝子レベル,細胞レベル,個体レベル,群集レベル,生態系レベルといった多様なスケールで解明する研究を行い,得られた科学的知見や技術を実践的に応用できる能力を身につける教育を行う。


海洋生物学講座の教育研究分野

生物海洋学

海洋に生息する植物プランクトンの個体群動態と環境要因との関係ならびに植物プランクトンを出発点とする物質循環について,浮遊生物学的および海洋化学的な視点から教育研究を行っている。現在取り組んでいる主なテーマは次の通りである。(1)植物プランクトンの群集構造に関する研究,(2)有害・有毒微細藻類の生理生態学的研究,(3)Th-234をトレーサーとした有機物質の下方輸送見積もり

水族生理学

魚類感覚器の特性解明を主な研究テーマとする。視覚の機能特性(視力・視野・色覚・光感度など)を組織構造や遺伝子解析により調べ,魚類が様々な水深・水域の光環境に適応して多様性を形成した仕組みを理解する。また,餌生物由来の化学物質に対する嗅覚や味覚の感受性を調べ,摂餌生態との関連や摂餌刺激機構の解明を行う。遊泳・摂餌行動の日周期性や生物時計の関与についても研究する。さらに,得られた知見を高い生産性を実現し,かつ生態系保全にも配慮した魚類増養殖技術開発へ応用する研究も行う。

藻類学

沿岸域における重要な一次生産者である海藻と海草の持つ生理及び生態を研究する。沿岸生態系において藻場が果たす役割と機能に関する基礎的知見を得ること,磯焼け海域から藻場を回復すること,そして海藻の増養殖手法を開発することに焦点を当てている。そして,海水の温度,光量,光質,栄養塩,藻食動物等の環境が海藻の生育繁殖に与える影響を明らかにするために,野外調査と実験室での培養実験を行い,海藻・海草群落に関する沿岸環境の保全について教育研究を行う。

浅海増殖学

浅海域は太陽からのエネルギーを基礎生産の源とした海洋における主要な生物生産活動の場である。本教育研究分野では,浅海域に生息する多種多様な水圏生物の生理・生態・増殖メカニズムを解明し,浅海域の高い生産性を利用した食料生産の場としての有効活用と,その持続的な発展を阻む様々な問題解決を目的とした教育研究を行う。

先端養殖管理学

健全な養殖魚介類の安定的生産を阻害する諸問題を先端の科学技術を応用して解決するための教育・研究を行う。最も注目すべき病害の問題に対しては個体,細胞および分子のレベルから病態や病原因を総合的に解析し,有効な診断法,治療薬および予防法を開発するとともに,それらを利用した病害防除に関する研究を行う。

魚類増殖学

魚類を主体とした水生脊椎動物の種多様性・系統・分類・動物相,および繁殖・成長・食性などの生活史について,魚類学や動物生態学,繁殖生理学的観点から研究を行い,これらの動物の基礎的生物情報を蓄積するとともに,減少の一途を辿る魚類資源など水生動物個体群の維持・増大ならびに水域の生物多様性保全に寄与する教育研究を行う。

海洋生態学

海と陸が出会う海岸域は多様な海洋生物を育む重要な場所である。海洋生態学教育研究分野は,干潟,砂浜,塩性湿地,感潮河川,藻場などの海岸域に生息する生物の生態が研究対象である。特に絶滅危惧種や外来種の生活史や個体群動態の研究成果を元に保全の方策を研究している。

水圏資源生物学

沿岸域における水産資源の持続的利用のために,水産対象種や,それらを取り巻く様々な生物の生態に関する教育・研究を行う.現在取り組んでいる主な研究テーマは,1)増養殖対象二枚貝類の好適な餌料環境の解明,2)藻場に生息する小型甲殻類の摂餌戦略,3)珪藻類の被食防御戦術,4)ヒザラガイ類や巻貝類の摂餌生態,などである.

水圏分子生態学

水圏分子生態学教育分野では,「DNA情報から生物の多様性(生態,形態,行動)の謎と歴史(適応・進化)を探る」を目的として,魚類を中心とした脊椎動物,軟体動物を対象に研究を行っている。具体的内容としては, 1)生物進化ならびに適応様式の解明 2)外来種の定着成功のメカニズムの解明 3)希少種保護に向けた知見の収集 4)分子情報を用いた育種技術の開発が挙げられる。

海洋個体群動態学

水産生物の個体群動態を明らかにするとともに,管理・保全するための理論と応用に関する教育研究を行う。現在,(1)我が国の沿岸沖合資源 の評価 や管理,(2)水産資源学の数学的理論,(3)渓流魚の資源管理,などについて教育研究を行っている。

応用行動学

水生生物の行動計測や生息域の環境観測をもとに,行動生態と環境との関連を明らかにする。具体的には,魚類や甲殻類の行動計測装置の開発,生息環境の把握,実験室内での生息環境の再現,行動の周期性解析,感覚器官の能力評価,環境変化に対する適応能力の評価などである。その応用として水産資源の効率的かつ持続可能な漁獲・利用に関する教育研究を行う。

水産応用情報学

持続可能な水産業と,それを支える沿岸域の環境保全を目的とし, ビッグデータや情報通信技術を漁業・養殖業や環境モニタリングに 応用する教育・研究を行う。ICTを活用した水産生物資源のモニタリングや 漁業の基礎となる沿岸環境(水質,波,流れ,地形)の計測技術といった,漁業・海岸のDX (デジタルトランスメーション)にかかる研究テーマに取り組む。

鯨類学

海洋の高次捕食者である鯨類について,野生および飼育個体を対象として,その生理,生態,行動などに関する基礎的研究と教育を行うとともに,その応用として,野生鯨類の保全や人間活動による影響の軽減,水族館等における飼育個体の繁殖推進などについて取り組む.

発生・代謝機能解析学

効率的で持続可能な養殖システムを確立することを目的に,分子生物学的手法を駆使して水生生物の発生,繁殖,代謝のメカニズムを研究する。また,ゲノム情報や最新の発生工学的手法を用いた新たな育種,繁殖技術および餌の開発を行う。

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